話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
遠藤保仁「俺自身がしたいのは……」
ガンバが失ったタイトルとスタイル。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/10/29 07:00
ガンバに2001年から所属し続けている遠藤。クラブの歴史を知るからこそ、現状について残すコメントも重みがある。
カウンターだけではなく、ボール回しもしないと。
「まぁ……相手をいなしたり意表をつくとか、そういう攻撃じゃなく、相手に分かりやすい攻撃をしている。裏を狙うのはいいけど、裏にボールが入っても2列目、3列目の選手との距離が離れているんで、前が孤立してしまう。カウンターだけではなく、DFラインを押し上げて相手陣地に全員が入るぐらいのボール回しをしないといけないけど、けっこう間延びしているからね。ボール支配率60%以上で勝ったという試合は、昨年も今年もないんじゃないかな」
遠藤は厳しい表情でそう言うが、もはや西野時代のパスサッカーに回帰することは難しい。今のレギュラーは、ハードワークしてデュエルに勝ち、素早くゴールを狙う長谷川監督のサッカーで飛躍してきた選手たちだ。もし遠藤が“あのパスサッカーをもう一度”と思っていたとしても、西野時代のサッカーを知る選手の数多くは、ガンバを離れてしまっている。かつてのスタイルを体現できる選手はほとんどいないのだ。
「たまたま」「なんとなく」の中途半端な攻撃。
ただ、持ち味としたはずのハードワークにも冴えが見られない現状で、「今のガンバはどういうスタイル?」と聞かれた時、果たして選手たちはどのくらい明確な答えを提示できるだろうか。
「守備的なのか攻撃的なのか、みんな迷うところだと思う。それがガンバの現状だよね。俺自身は川崎みたいなサッカーをしたいと思う。それは多くの選手がそう望むだろうし、見ていても楽しいと思うから。でも、今は健太さんのコンセプトがあるんで、それを勝手に打ち壊してやるわけにはいかない。それをやりつつ選手がうまくコントロールしてやるのが理想だけど、それができていないから、こういう状況になっているわけで……」
遠藤の表情が曇る。
ここにきて何かを大きく変化させることは難しい。とはいえ、ピッチに出たら戦わないといけない。心理面の微妙な揺れ具合が「たまたま」「なんとなく」という中途半端な攻撃となって、迫力を欠く要因になっているのかもしれない。