スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ピケに「お前の国はスペインだ!」
カタルーニャと代表、漏らした本音。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2017/10/15 11:30
試合中にブーイングを浴びながらも、ロシアW杯出場権獲得に全力を尽くしたピケ。プロサッカー選手としてのプライドを見せた。
「フットボーラーはグローバルな存在だから……」
ワールドカップ出場のかかったアルバニア戦を前にこのような事態を招いたことで、責任を感じたピケは4日に単独で会見を開いた。
「何時間かかってもいいから、全ての質問に答える」
冒頭にそう話した彼は、実際に協会の広報からストップがかかるまで50分近くにわたり、計27の質問に答えた。
その中で印象に残ったのは、次のやりとりだ。
――スペインからの独立を望む者がスペイン代表でプレーするのは矛盾していないか?
「自分は違うが、独立派の選手もスペイン代表でプレーしていいと思う。現状カタルーニャ代表はないし、その選手がスペインに対してマイナスの感情を抱いていなければね。繰り返すけど、自分は違うからね」
――君は独立派?
「その質問には答えない。フットボーラーはグローバルな存在。どちらに傾倒してもファンの半数を失うことになるからね。彼らは何よりも政治思想を重んじるけど、自分たちはプレーするために来ている。うちの(パートナーであるシャキーラとの間に産まれた)子供たちはコロンビア人であり、レバノン人であり、スペイン人であり、カタルーニャ人でもある。世界はグローバル化しており、国籍は重要ではなくなってきている」
投票権は主張しても独立の是非には言及しない。
ピケはそう言うものの、実際は独立派のほとんどがスペイン政府を目の敵にしている。それに独立を支持しながら代表でプレーするのが難しいことは、投票権は主張しても独立の是非には言及しない彼自身の微妙な姿勢が物語っている。
かつてルイス・アラゴネスに代表招集辞退を告げたとメディア上で騒がれた、オレゲール・プレサスのようなケースもいないわけではない。だがほとんどの選手はフットボーラーとしてのキャリアを重視し、政治的な発言は避けながら代表でプレーする道を選んできたはずだ。