スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ピケに「お前の国はスペインだ!」
カタルーニャと代表、漏らした本音。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2017/10/15 11:30
試合中にブーイングを浴びながらも、ロシアW杯出場権獲得に全力を尽くしたピケ。プロサッカー選手としてのプライドを見せた。
「代表に行くことは愛国心とイコールじゃない」
終始落ち着いた物腰で、あらゆる質問を想定して準備してきたと思われるこの日の会見とは違い、より感情的になっていた1日のピケは興味深い本音を口にしている。
「代表に行くことは愛国心とイコールじゃない。呼ばれたら全力で戦うだけだ。他の選手とは同じ感情を抱いていない帰化選手もたくさんいる。代表は参加し、勝利を目指すものだ」
この意見には賛否両論あるだろう。例えばラ・リーガのハビエル・テバス会長は次のように反応している。
「私にとって、そして恐らく多くのスペイン人にとってもそうだと思うが、スペイン代表はオールスターチームではない。代表の一員となるためには偉大な選手であるだけでなく、この国に愛情を持っていなければならない。そうでなければ代表に来る理由がないだろう」
テバスの言う通り、国を代表して戦う代表チームが多くの選手やファンにとって特別な存在であることは確かだ。しかし、だからと言って愛国心を代表入りの条件としてしまうと、スポーツの観点から見て不平等が生じてしまう。
誰しも生まれる場所は選べない。だがスポーツは誰もが同じルールの下で競い合う、万人に平等な存在であるはずだ。ならば出自や思想に関係なく、たとえ偶然生まれた“母国”に代表チームがなかったとしても、あらゆる選手にEUROやワールドカップへの出場を目指すチャンスが与えられるべきだ。
しかし、問題はそのような選手を周囲が受け入れるかどうかにある。その点、ピケは「この状況を覆す」と誓っていたが、今後も聞くに堪えない誹謗中傷を受ける機会は何度もあるだろう。
たとえそうだとしても、まだまだラ・ロハでプレーする彼の姿が見られることを願っている。
なぜならそれは、カタルーニャがスペインと共にあることを意味するからだ。