マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
中日・京田陽太は存在が“スーパー”。
痩せて見えた秋もプロ生活の第一歩。
posted2017/10/16 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
セ・リーグのペナントレースが幕を閉じた。
10月10日、その最後の一戦となった阪神-中日戦で、中日ドラゴンズの新人内野手・京田陽太は「1番・遊撃手」で出場したもののノーヒットに終わり、長嶋茂雄氏(巨人)の作ったセ・リーグプロ野球新人記録である「153安打」に惜しくも4本及ばず、ルーキーイヤーを終えることになった。
それでも、たいしたもんだと思う。
“仕事”とはいえ、頭が下がる。
同じルーキー遊撃手でセ・リーグプロ野球新人記録を上回る「155安打」を記録し、ペナントレース143試合のすべてのイニングを守り通した西武・源田壮亮にはもっと脱帽であるが、彼には社会人野球・トヨタ自動車というアマチュア最高峰のレギュラー遊撃手を2年間全うしてきたというアドバンテージがある。
もちろん1年目にこれだけの実績を挙げた彼を「りっぱ!」と称えるほかないのだが、京田陽太は学生からのプロ入りだ。
その“差し引き”を考えれば、ほぼ同等の、とんでもない「お手柄」と心からの敬意を表したい。
「自分は、守備の選手ですから」
「自分は、守備の選手ですから」
日本大当時の京田陽太は、みずからをそう表現していた。
「1歩目のスタートと球際には自信持ってます。高校時代から徹底して言われてきましたから」
野手は打撃成績しか報道されないから、どうしてもバッティングで語られてしまうのだが、実は「フィールディングを見てほしい!」と声を張って訴える内野手はとても多い。
源田壮亮がトヨタ自動車にいた頃もそうだったし、京田陽太もまたしかり。とりわけ、長く遊撃のポジションを支配してきた職人肌に、そういう選手がこれまでも多くいた。
「打者の姿を“周辺視野”でボンヤリと眺めて、インパクトの瞬間ギリギリまでよーく見る。それで、1歩のスタートがサッときれます。打者をピンポイントでジッと見つめてしまうと、こっちの体が硬直して、サッと反応できない。“だいたい”で見ながら、ある程度こっちもリラックスして待ち受ける感じで」
とても実感のともなう話をしてくれたものだ。