マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
中日・京田陽太は存在が“スーパー”。
痩せて見えた秋もプロ生活の第一歩。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/10/16 07:00
1年目の内野手がシーズンを全うした、という事実が既に快挙。京田陽太、間違いなくこれからプロ野球界を支える選手だ。
自分の守備範囲の打球をきちんとアウトにする。
石川県の金沢市、その隣り町の中学を卒業して青森山田高に進んでからは、高校でも大学でも、いつも1年の春から遊撃のレギュラーを守り通した。
確かに、そのフィールディングはいつも光っていた。
実戦を見てもシートノックを見ても、いつもフットワーク、身のこなしが軽快で、182cmの長身を持て余しているようなところがどこにもない。手足の先まで“自分のプレー”になっていた。
大学時代の神宮球場では、走者のいない時は芝生の切れ目で守っていた。三遊間からのスローイングも「エイッ、ヤー!」ではなく、ステップをきって軽いスナップスローで、糸を引くような送球を見せてくれた。
スーパープレーはしなくても、自分の守備範囲の打球はきちんとアウトにしてみせ、捕球姿勢に入った打球はまずエラーしない。
投手が「勝った!」と心の中でこぶしを固めた打球は、絶対に逸らさない。学生選手でも、そんな“矜持”を感じた場面もいくつもあった。
華麗な吉川尚輝、堅実の京田陽太。
京田陽太と同期の遊撃手に、昨年のドラフト1位で巨人に進んだ吉川尚輝(中京学院大)がいた。
2人が全国の舞台であいまみえることはなかったが、中京学院大は昨年6月の「全日本大学野球選手権」初出場で初優勝。そんな快挙をやってのけたチームで、吉川尚輝は走攻守の牽引車だった。飛び抜けた身体能力とスピードで、あっと驚くようなトリッキーなプレーもやってのける派手なプレースタイルの遊撃手。
対照的に京田陽太のほうは、堅実に確実に、間違いのないプレーでアウトを重ねていくスタイル。それが“地味”に見えてそんな表現もされたが、その本質は、準備ができていて初動が速かったから、カーン! といったら、いつもそこに彼がいる。そんな玄人受けするフィールディングが京田陽太の持ち味というのが、“ほんとのところ”だった。
それでも、こんな場面も覚えている。
センター前に小フライが上がった。お得意の1歩目を効かせて、背走で打球を追った京田陽太。一瞬、落下点を間違っていたのに気がつくと、とっさに方向転換。最後は、スライディングキャッチで帳尻を合わせたスーパーキャッチ。それが、試合開始直後のファーストプレーだったから、もっと驚いた。
華麗な吉川尚輝に、堅実無比の京田陽太。
どちらが“上”ということじゃない。好みで、選択が分かれることになった。