セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
爆買い補強でもミランは低空飛行。
モンテッラ解任危機を救うのは誰?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/10/06 08:00
10代にして頭角を現しつつあるクトローネ。モンテッラ監督の現役時代を想起させるゴールセンスは、指揮官を救うことになるか。
対策を練られると今のミランは単なる烏合の衆に。
今季のミランは昨季と比べて、GK以外10人が入れ替わった。確固としたベースがあって1人、2人が変わったのとはわけが違う。昨季までに築き上げたものをリセットして、選手同士も監督も、互いを知ることから始めなければならない。
チーム作りへの大きな障害となっているのは、皮肉なことに巨額の資金を投入した大量補強そのものなのだ。
歴然とした実力差のある地方クラブや個々の能力で押しきれるELグループリーグ・レベルの対戦相手なら、派手に勝つことは現状でも可能だろう。
5-1で大勝したEL開幕戦の相手、オーストリア・ウィーンのフィンク監督は「このミランに正面から戦いを挑んだのが間違いだった」と完全に白旗を挙げたほどだ。だが、イタリア国内のよく組織された中堅以上の相手から対策を練ってこられると、今のミランはそれぞれのポジションに並べられただけの烏合の衆になってしまう。
サンプ戦までの今季公式戦11ゲームで、モンテッラは11通りのスタメンを試した。采配にはまだまだ迷いが見られ、指揮官自身が「うちはまだチームとして未成熟だ。集団として手探りの状態にある。自分たちのレベルがどこにあるのかさえわかっていない」と認めた。“有名選手を並べてハイ、出来上がり”で、強固な守備陣が作れるのはTVゲームの中だけだ。
凡ミスが目立つのが、よりによって新主将ボヌッチ。
ここまでの黒星では、浮足立った個人のミスも多い。注意力散漫による凡ミスが目立つのが、よりによって新主将ボヌッチなのだから立つ瀬がない。稀代の名DFは新天地で気負いすぎているせいか、サンプ戦とELリエカ戦で失点に繋がる重大なマークミスやパスミスを犯し、「俺たちはまだ相互理解が足りない」と猛省しきりだ。
また右サイドの攻守に期待をかけていた新加入DFコンティが、9月中旬に練習中の大怪我によって長期離脱を強いられたのもモンテッラにとって誤算だろう。3節ラツィオ戦での4失点大敗を受け、4バックに見切りをつけたモンテッラは、続くELでのウィーン戦から3バック導入に踏み切った。
それでも守備陣の安定化にはほど遠く、7節終了時点でミランはキエーボやボローニャよりも多い10失点を献上。守備陣全体のプレー精度の向上と相互理解は急務だろう。