卓球PRESSBACK NUMBER
「自信がない」から「卓球、楽しい」。
平野美宇はいかに壁を超えたのか。
posted2017/09/26 11:00
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph by
AFLO
この1年、快進撃を続けてきた平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)が新たな壁にぶち当たっている。
西インドのアーメダバードで開催されたアジアカップ(9月15~17日)は平野にとって、約2カ月ぶりの公式戦となった。卓球のアジアカップとは、世界王者中国や強豪国シンガポールなどが出場するレベルの高い国際大会で、女子W杯の予選も兼ねている。今年の女子W杯はカナダ・オンタリオ州のマーカムで10月27~29日に開催され、アジアカップ3位までは自動的に、4~8位は選考の結果、出場できる規定だ。
ちなみに平野は昨年、アジアカップで5位に入り、米国・フィラデルフィアの女子W杯に出場。16歳で史上最年少優勝を果たし、控え選手に甘んじたリオ五輪の悔しさを一気に晴らしたのが印象的だった。思えば今日の快進撃はあのW杯から始まったのだ。
平野陣営は今年ももちろん、ディフェンディングチャンピオンとして臨むW杯を視野にアジアカップでの好成績を狙っていた。ところが1グループ4人中、上位2人が通過できる大会初日の予選リーグでまさかの3位。平野はプレーオフに回ることとなった。
そのことがよほどショックだったのだろう。あふれる感情を抑えきれず、平野の目から大粒の涙がこぼれた。
いつもとは違った、平野の精度を欠いた打球。
予選リーグで平野は今大会一の実力者である世界ランク3位のシュ・ウレイ(中国)と同じグループに入った。他は香港女子ナンバーワンのドゥ・ホイカン、シンガポールのベテラン、ユー・モンユーという顔ぶれだ。2人の世界ランクはそれぞれ32位と35位。同6位の平野にとって格下の相手だが、それぞれ実績があり侮れない。
初戦の相手はユー・モンユーだった。結果はゲームカウント3-1で勝ったものの、平野が得意なバックハンドにオーバーミスが目立ち、もったいない失点を重ねた。久々の実戦とあって試合勘が戻らないのか。いや、もしかすると夏の間にさらなる技術改良にトライし、それが上手くいかないのかもしれない。そんな風に勘ぐるほど平野の打球は精度を欠き、いつもと違って見えた。