卓球PRESSBACK NUMBER
「自信がない」から「卓球、楽しい」。
平野美宇はいかに壁を超えたのか。
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph byAFLO
posted2017/09/26 11:00
平野美宇は中国からも警戒されるようになり、相手の研究を上回る必要が以前よりも増してきた。ここからは、地力の勝負なのだ。
「初日は卓球が嫌いになったほどだった」
石川に敗れ、すべての試合を戦い終えた平野の様子はどうか。大会2日目には少しだけ、最終日にはだいぶ落ち着いた状態になり、話を聞くことができた。まず石川との対戦についてはやはり、「3ゲームを取っていたら結果も違ったかもしれない」と振り返り、「負けてしまったのは実力」と敗北を認めている。
そして、今大会を通じて止まらなかった涙の理由は何だったのか?
平野は試合のなかったこの2カ月間、それまで大会続きでなかなか着手できなかった反省練習に取り組みながら、独り悶々と悩んでいたことを明かした。
「最近は自分の位置を高く置き過ぎて、中国以外の選手に負けたらいけないと思ったりもし、自分を追い詰め過ぎていた。それでこのアジアカップでも自分の卓球ができなくて、初日は卓球が嫌いになったほどだった」
新スタイルが対策されて、ぶつかった壁。
平野によれば、今年になって中国人以外の海外の選手に負けておらず、予選リーグで格下のドゥ・ホイカンに負けたことが大きなダメージになったという。「次の日まで引きずって、もうボールもラケットも見たくないと思った」と平野はまで言った。3歳半で卓球を始めてこのかた、何度も悔しい思いをしてきた彼女が、ここまで落ち込むことは珍しい。これまでは、「(トップ選手になってからは)卓球を楽しいと思うことはない。でも、辞めたいと思うこともない」というのがせいぜいだった。
さらに平野は続ける。
「安定型から攻撃型のプレースタイルに変えたこの1年、すごくいい結果が出て、目標も結構達成できた。そうしたら世界中の選手が自分に向かってきて、対策もたくさんされて、そこでまた壁があった。特に世界選手権が終わってからは毎日が大変に思えてモヤモヤしていた」
ただその一方で、不調のまま臨んだアジアカップの3日間は「以前の自分なら最初がダメだと、そのまま最後までずっとダメだったが、今回は気持ちを切り替え、最低限目標にしていたベスト4に入れた。その点は今までより成長できていると思う」と冷静に分析もした。