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後藤武敏、CS進出への密かな想い。
「松坂と対戦したいなあ。それが夢」
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byKyodo News
posted2017/09/15 07:00
今季は後半戦まで初安打はお預けだったが、その長打力と人柄はベイスターズに欠かせない。
小池正晃に助言をもらい、不安を打ち消して。
ゴメスの愛称で親しまれる後藤は、根強い人気を誇る選手だ。
裏表のない性格のせいでもあるだろうし、セルフプロデュースのうまさもある。
今年からはアントニオ猪木のテーマ曲「炎のファイター」を登場曲に採用した。プロレスのリングサイドなら「イーノーキー!」の掛け声が入るところで「ゴーメースー!」とファンは叫ぶ。試合終盤、代打のコールと同時にこの曲がかかれば盛り上がらないわけがない。
ただ、当人の腹の内は危機感でいっぱいだ。
今シーズンの一軍昇格は7月23日。声がかからないままシーズンが終わることも頭をかすめた。その先に何が起こりうるかも。
横浜高校時代のチームメイトで、現在はベイスターズの二軍打撃コーチを務める小池正晃にアドバイスをもらいながら、不安をかき消すようにバットを振った。
昇格後も苦しい日々は続いた。約1カ月、ヒットが出なかった。
「こういう立場だから、日々、すごく感じるものがあるんです」
後藤は「何を」感じているのかは言葉にしなかったが、葛藤をもたらす根源が何であるのかは十分に伝わってきた。
福留や鳥谷、阿部のようなベテランは貴重な存在。
8月24日のカープ戦で飛び出した2本目のヒットは3試合連続サヨナラ勝ちをお膳立てする二塁打となったが、それを含めても今シーズンはまだ3安打。打率は.143と低迷している(9月12日終了時点)。
だが、背番号55は、いまのベイスターズにおいて極めて貴重な存在だ。
先を行くタイガースには福留孝介や鳥谷敬が、追ってくるジャイアンツには阿部慎之助がいる。中心選手として優勝を経験した彼らベテランたちは、ここぞの場面で勝負強さを発揮している。