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サッカー界の英雄が麻薬絡みで破産!?
殺人件数2位メキシコ、その闇の深さ。 

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トマス・グバン

トマス・グバンThomas Goubin

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photograph byPatrick Boutroux/L'Equipe

posted2017/09/04 08:00

サッカー界の英雄が麻薬絡みで破産!?殺人件数2位メキシコ、その闇の深さ。<Number Web> photograph by Patrick Boutroux/L'Equipe

世界で2番目に殺人事件の多い国のサッカー場。リーガメックスのクラブには、スタジアム内だけでなく、その外の世界でも警察が目を光らせている。

優しい思い出しかない会長だったが……実は犯罪王。

 マルケスはミチョアカンで青年時代までを過ごした。

 ここは、麻薬密売ルートの中心地であり、一大集積地でもある。

 マリファナ畑とメタムフェタミンの製造工場が多くある地域・ティエラカリエンテを巡っては、以前から多くの組織が抗争を繰り返してきた。

 26歳のメキシコ代表、アンヘル・セプルベダがプロデビューを果たしたのも、3部に所属する地元のクラブ「マパチェス」においてだった。彼はクラブの会長が、「ファミリア」という犯罪カルテルの下部組織を統括していたとして、国中から糾弾されるという事態を体験している。会長がその任を突如解かれたのは、2008年に「クラブ・アメリカ」との試合のためにクラブのメンバーたち全員が移動している最中のことだったという。

 貧しい農民の息子であったセプルベダには、リードされた試合のハーフタイムのロッカールームで、選手に1000ペソ(約50ドル)の臨時ボーナスを提示したことも含め、会長のいい思い出しか残っていなかった。

「やる気を回復した僕らは、後半7点をあげて試合をひっくり返した。もちろんボーナスは貰ったよ」と、セプルベダは地元の『エル・パイス』紙に語っている。

コロンビアとメキシコ。麻薬とサッカーの事情の違い。

 サッカー界からの麻薬一掃は、メキシコサッカー協会にとっても避けて通ることができない問題である。

「マパチェス」の例に倣い、協会は幾つかのクラブを解散させたが、それは2部から4部までのチームに限られていた。

 エスコバルが支配した時代のコロンビアとメキシコとの最大の違いがそこにあった。

 エスコバルが影響下に置いたのはコロンビアでもトップのクラブばかりだったが、メキシコのトップクラブは大企業グループの傘下にあり、カルテルの支援を必要とはしていないのである。

【次ページ】 偉大なる選手の栄光が、すべて終わった日。

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