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サッカー界の英雄が麻薬絡みで破産!?
殺人件数2位メキシコ、その闇の深さ。 

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トマス・グバン

トマス・グバンThomas Goubin

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photograph byPatrick Boutroux/L'Equipe

posted2017/09/04 08:00

サッカー界の英雄が麻薬絡みで破産!?殺人件数2位メキシコ、その闇の深さ。<Number Web> photograph by Patrick Boutroux/L'Equipe

世界で2番目に殺人事件の多い国のサッカー場。リーガメックスのクラブには、スタジアム内だけでなく、その外の世界でも警察が目を光らせている。

ほぼ破産宣告とも言える厳しい処分となった元英雄。

 マルケス自身が今回の摘発で逮捕はされないものの、口座が凍結されたうえアメリカ滞在ビザも無効とされ、アメリカ国民と商業活動をおこなうことも禁止されてしまった。

 地元メディアによれば、破産宣告すら受けているという。

 また所属するリーガメックスのクラブ「アトラス・グアダラハラ」が、発表の翌日からマルケスへのサービスをすべて停止したために、彼は自分のサラリーすら引き出せなくなってしまったのだった。

“ミチョアカンのカイザー”(ミチョアカンは太平洋に面したメキシコ中部の地方。フランツ・ベッケンバウアーを彷彿させるプレースタイルから、メキシコで彼はそう呼ばれている)の突然の失墜だった。

世界最大の犯罪組織で活躍する男“エル・ティオ”。

 2014年にアメリカのシンクタンクである「カウンシル・フォーリン・リレーション」がおこなった調査によれば、麻薬の流通はメキシコの国内総生産の3~4%を占める一大産業である。麻薬カルテルのもたらす金は国内経済に浸透し政治家を汚染している。サッカー界だけはその触手から逃れているはず……と考えるのは少々虫が良すぎる。

 アメリカの捜査当局によればエル・ティオこそは、この世界最大の犯罪組織である「シナロア」と「ハリスコ・ノウバ・グアダラハラ」というふたつの犯罪カルテルにおけるマネーロンダリング部門の中心人物であり、その存在がほとんど表に出ることがない陰の実力者なのであった。

 スポーツ紙『カンチャ』は、マルケスがそのエル・ティオの息子ラウル・フローレス・カストロと親しいと伝えている。カストロの娘ラファエラの名付け親にマルケスはなっているのである。

 カストロは、元サッカー選手のダヴィッド“エル・マジック”メンドーサが、自動車事故に見せかけて2008年に暗殺されたとき、所属クラブだった「アトラス・グアダラハラ」の元ストライカーであったミゲル・セペダとともに捜査線上に名前があがっていた。そしてセペダとマルケスは、エル・ティオが実質的なオーナーを務めるクラブ「マロウビAC」に投資していたのだった。

 ただしマルケスの弁護士は、彼はエル・ティオとは面識がないと述べている。

【次ページ】 犯罪者と同じ土地、同じ境遇から出てくる選手たち。

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