猛牛のささやきBACK NUMBER
オリ1年目・山本由伸の成長速度。
「久々にあんなピッチャー見た」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2017/08/23 11:20
ドラフト4位の高卒1年目が一軍昇格をつかみ、初登板で好投。山本由伸の成長速度は周囲の想像をはるかに超えている。
四球が少ないので、球数も自然と少なくなる。
山本は小学1年で野球を始めてから、内外野や捕手も経験してきた。高校でも、1年秋に投手に専念するまでは二塁手が主だった。
「ボール球が多いピッチャーだと、やっぱり守りにくいじゃないですか。だからストライク先行でテンポよく、野手が守りやすくてバッティングにもつながりやすい投球が一番いいと思っています」
たとえボール先行になっても、「変化球でカウントを取れる」という絶対的な自信があるから慌てない。力強いまっすぐの印象が強いが、山本自身は変化球、特にスライダーにも自信を持っている。
四球の少なさは当然、球数の少なさにもつながる。8月3日のウエスタン・リーグ広島戦では、80球までという設定だったのだが、スイスイと8回2アウトまで行ってしまった。
田口二軍監督は、「僕はもうそろそろ(一軍に)送り込んでいいかなと思うんですけど、上からは、『まだ球数そんなに投げてないから』と言われる。でも球数投げようと思ったら、10回ぐらい必要なんですよね」と苦笑した。
田口監督「すっごい冷静。自分から崩れることはない」
田口監督は、山本のメンタル面の強さも高く評価していた。
「すっごい冷静です。どんな時にも周りがよーく見えていて、対処法がわかっている。だから、相手に打たれることはあったとしても、自分から崩れることはない。ランナーを出しても、どこでアウトを取ろうか、誰に隙があるかな、というふうに常に頭が働いているんです」
その冷静さは、一軍のマウンドでも失われることはなかった。
「テンションが上がっちゃうと落ち着けないので、いつもテンションを落として心を落ち着かせることを心がけています。今日も気持ちがたかぶるような場面はあまりなかったです」と山本。
マスクを被った若月は、「緊張している姿がひとつもなかった。逆に僕の方が緊張していました」と笑った。
一軍の打者が相手でもストライクゾーンで勝負し、四球は敬遠気味に歩かせた1個だけ。福良淳一監督は、「堂々として投げっぷりもよかった。まっすぐも強くて、フォアボールの心配がないのが大きい」と讃えた。