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オリ1年目・山本由伸の成長速度。
「久々にあんなピッチャー見た」 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2017/08/23 11:20

オリ1年目・山本由伸の成長速度。「久々にあんなピッチャー見た」<Number Web> photograph by Kyodo News

ドラフト4位の高卒1年目が一軍昇格をつかみ、初登板で好投。山本由伸の成長速度は周囲の想像をはるかに超えている。

球場の空気を一変させた150kmの球速表示。

 山本は、宮崎県の都城高校からドラフト4位で入団した。入寮したばかりの頃は「先輩はみんな、技術もだけど人としてすごいなーと感じています。同じ新人でも、山岡(泰輔)さんとか社会人出身の人は、先輩が出ていく時に先にドアを開けて待っていたり、ちょっとした気遣いが勉強になります」と、初々しさにあふれていた。

 それでも、マウンドでは早くから異彩を放っていた。

 例えば、山本が初めて実戦で先発登板した4月22日の関西メディカルベースボール学院との試合。練習試合ということで、舞洲サブ球場にはのどかな空気が漂っていたのだが、山本の初球がズドンと重たい音でキャッチャーミットにおさまり、スコアボードに「150km」が表示されると、スタンドはざわめき、球場の空気が一変した。そこから観客はスコアボードの球速表示に釘付けになった。

タイプは「則本とか、そんな感じじゃないですか」。

 その後はウエスタン・リーグでも先発し、無失点のまま1回、3回、5回とイニング数を増やしていった。最速154kmのストレートとスライダーを軸に、テンポよく打ち取っていく。たまにピンチを背負っても、まったく表情を変えることなくねじ伏せる。

 捕手の山崎勝己は「持ってるものがすごい。球が強い。バッターがまっすぐを狙っていても、まっすぐでファールを取れるのは魅力ですね」と語っていた。

 山崎に、タイプ的には誰に似ているかと聞くと、「うちにはあんまりいないかな。他の球団だったら則本(昂大)とか、そんな感じじゃないですか」と、当時、連続試合2桁奪三振の記録を更新中だった楽天のエースの名を挙げた。

「結構パワーピッチャーだから。そりゃもちろん、則本と今比べちゃダメですけど(笑)。タイプ的にはね」

 順調に登板を重ねた山本は、8月11日の時点で33回2/3を投げて失点1、防御率0.27という驚異的な数字を残していた。さらに特筆すべきは与四球わずか2という少なさだ。

「とにかくストライク先行が基本」と言う。それは野手心理がよくわかるからだ。

【次ページ】 四球が少ないので、球数も自然と少なくなる。

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