“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
Jクラブはこの男を見逃してないか?
ゴリゴリのFW、山梨学院・加藤拓己。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/08/24 08:00
同世代のチェコ代表選手を弾き飛ばしていた加藤。高校選手権の予選が始まるまでがプロ入りするか否かの勝負の期間となる。
「とにかく目をギラギラさせていましたね」
「間近で見ると、オーラは圧倒的だった。『どうしたらこんな風になれるんだろう』と率直に思ったし、練習でも俺が片手で飛ばされた相手を、テセさんは軽々と背負ってシュートまで持っていく。改めて凄い人だと思いました。
それに凄く優しくて、身体の当て方だったり、どうしたら相手の懐に入れるのか、キープのときの身体の使い方とか、直接指導もしてくれた。すべてにおいてやっぱり憧れの選手でした」
チョン・テセから大きな刺激を受けて臨んだSBSカップ。
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初戦のチリ戦で途中出場から試合の流れを変えるも、チームは1-2の敗戦。第2戦の静岡ユース戦ではスタメン出場を果たすも、ゴールを決められぬまま67分に交代し、チームも0-1で敗れた。
チームも2連敗、自身も結果が出ないまま迎えたのが、最終戦のチェコ戦であった。ベンチスタートだった彼は、まだまだ出番に飢えていた。
「ずっと名前を呼ばれなくて……アップ中に一回、ベンチの裏まで行って(アクリル板を)バンバン叩こうかなと思った(笑)。それくらい『早く俺を試合に出してくれ』という気持ちが強かった。とにかく目をギラギラさせていましたね」
必死のアピールが実ったのか、ついに73分にピッチへ投入されると、溜まっていた想いを一気に発散させるかのように気迫のプレーを見せた。
そして、その想いがすべて籠められたのが、あの「ロケット」のようなゴールだった。
あのゴールは……サッカー人生を変えたはず!
「今大会はあの1点だけだったけど、あの1点が入っているか、入っていないかで自分の評価は大きく変わってくる。代表チームとしての評価も変わってくる。これで進路にどう影響するか分からないですけど、あそこで決められたことが僕の今後のサッカー人生においては大きなことだったと思う」
SBSカップ以降の練習試合で、4戦連発の5ゴールと好調をキープする彼の下に、未だプロからのオファーは来ていない。しかし、最後の最後までチャンスをつかむべく、そのギラついた目に諦めの色はない。
強い気持ちで臨めば、必ずチャンスは掴める。
これをチェコ戦で改めて学んだ彼がどのような進路を選ぼうが、この夏でワンランク凄みを増したことは間違いない。