“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
屋久島出身初のJ1・J2選手になる!
神村学園・高橋大悟が駆け抜けた夏。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/08/08 07:00
14番を身にまとい躍動した高橋。屋久島が生んだサッカープレーヤーとして名を刻む戦いはこれからも続く。
高橋らに立ちはだかる、鹿実と鹿児島城西という壁。
筆者が印象に残っているのは、彼が高1の頃のインターハイ予選決勝・鹿児島実業vs.神村学園だ。ピッチ上で1人だけ独特のリズムを刻み、小柄ながらすっと背筋が伸びた姿勢から、長短のパスを使い分けていた。特に印象的だったのが、左足インサイドのインパクトの強さだ。会場のピッチの芝は長く、中途半端なインサイドキックではパワーが足りなかったり、精度が落ちてしまうような状況だった。しかし、彼のインサイドキックは両方ともに抜群で、少ないタッチから放たれるミドルパスの弾道は非常に美しかった。
敗れはしたものの、高橋の存在は際立っており、それ以降、彼の動向を常に追うようになった。
しかし“県内の壁”は非常に分厚いものだった。鹿児島は神村学園、鹿児島城西、鹿児島実業の“3強”が全国1枠を争う激戦区でもある。ともに選手権ベスト4以上の戦績を収め、Jリーガーも多く輩出している3校が潰し合う中で、ここ2年間は高橋と同学年であるプロ注目のCB生駒仁ら擁する鹿児島城西がタイトルを独占し、神村学園はいつも涙を飲む存在だった。
高校最後のインターハイでついに掴んだ全国切符。
それゆえ全国の舞台で彼を見ることはなかった。だが、彼は自らの力で技術を磨く術を良く知っていた。今春の九州は福岡で開催されたサニックス杯。ここで全国トップレベルの強豪校、Jの下部組織相手に見せたプレーは出色の出来だった。
前述した左足スキルはもちろんのこと、利き足ではない右足のキック、シュートの質が明らかに向上していた。左足に持ち変えることなく、最短でフィニッシュまで持ち込むプレーにより、アタッキングエリアでの脅威の度合いをさらに増し、より怖い選手へと変貌していた。
「常に全国レベルを忘れないようにしています。九州の中だけで満足していたら、自分が望む先の世界へ進めないですし、自分が成長すればそれだけチームのプラスになる。今年は何が何でも全国に出たいので」
強い志を持った高橋は、高校最後のインターハイでついに想いを結実させた。インターハイ鹿児島県予選決勝では鹿児島実業を相手に、高橋が決勝弾を叩き込み、高校初の全国となるインターハイ出場を手にした。