ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
畑岡奈紗、米ツアー1年目の支え。
「藍さんと一緒にプレーできる」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byKyodo News
posted2017/07/17 08:00
日本女子ゴルフを引っ張ってきた宮里と、10代にして米国に挑戦する畑岡。高い志を持つ2人が出会ったのは、運命だったのかもしれない。
一度の苦い失敗が、10代の心をかき乱した。
予兆はあった。
畑岡はターニングポイントに、3月のカリフォルニア州でのキアクラシックを挙げる。
予選を通過して3日目を68で回ると16位に浮上。しかし「調子は悪くなかったんです。でも、急にところどころでアプローチがおかしくなって、シャンクみたいな当たりが多く出た。私はもともと、(フェースの)ヒール寄りにボールが当たるタイプなんですけど、それが……」と密かな不信感が生まれた。
この試合は翌月のメジャー・ANAインスピレーション出場をかけた大事な試合だった。そして最終日、78をたたいて59位で終了。関係者の試算では、最終18番をパーで上がれば賞金ランクの資格でメジャー出場を決められたが、締めくくりはトリプルボギーだった。
一度の苦い失敗は、10代の心をその後もかき乱した。
「シャンクが出ることは減って、だいぶ良くなってきたんですけど、今度はアプローチをしたくない、ショットでミスをしないように、という気持ちが強くなってきた。そこから自分のゴルフを立て直すのが難しくなってきたんです」
若々しい、良い意味での血気盛んな思い切りは失われ、長いショットにも陰りが出た。
そもそもプロ生活というものを日本でしていなかった。
得意のドローボールでのティショットも「プッシュアウト(打ち出しから右に飛び、そのまま右へ曲がるミス)が怖くて、右に打ち出すイメージを出せないときがある」という。
「こっちに来てから、今までなかったようなミスをして、なかなかその……ネガティブな記憶が強く残るようになった。それを頭から消せず、次のショットに集中することができなくなっているのかなと思います」
悪循環から、迷宮から抜け出すには何が必要なのか。他人からアドバイスを受けるか。リフレッシュをするか、別の側面から自分を見つめてみるか。スコットランド人のキャディ、日本人マネージャーと3人での旅である。渡米してから、コーチが帯同した期間が十分あったかといえば、複数の人に話を聞く限り、どうもそうは思えなかった。
畑岡は5月初旬に一時帰国した。友人と会い、心を軽くして米国に戻ってこう思ったという。
「わたし……そもそもプロ生活というものを日本でしていなかったんです。(プロ入り後)そのままこっちに来て、言葉もなかなか通じない。考えなきゃいけないことが、日本よりも多いなあと思います」