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清原和博、独占告白2時間6分。
笑みはなく、手は緊張で震えていた。
posted2017/06/29 08:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Takuya Sugiyama
記憶の中にある清原和博はそこにいなかった。
目は力を失い、手は小刻みに震えていた。
頭ではわかっていても、言葉がなかなか出てこない。一語、一語、間をおきながら、もどかしそうに絞り出す。実際このインタビュー中、1度も笑みを見ることはなかった――本日発売のNumber930号「清原和博『告白』」の取材での話である。
いくつになっても無邪気で、悪戯っぽくて、どこか憎めないあの笑顔はなかった。
ひょっとすると微笑んだシーンがあったのかもしれない。ただ、もしそうだとしても受け取る側には到底、笑みとわかるものではなかった。
自分たちの記憶にある「4番」のイメージを追いたかった。
「正直、このインタビューを受けるにあたってすごく緊張しています……。今日、家を出てくるまで、どうしようか、どうしようかという葛藤もありました」
自らそう打ち明けたように、清原氏がまとっていたのは怯えであり、苦しみであり、弱さだった。
「前向きな気持ちになれた瞬間は?」
「今後の目標は?」
途中、あえてそう聞いた理由は、こちらがどこかで強がりや反発を期待していたからかもしれない。
自分たちの記憶にある、かつて4番を打っていた頃のイメージを少しでも追いたかったからかもしれない。
ただ、そういう目論見は手応えなく彼をすり抜けていった。
「これからどうやって生きていけばいいのか、不安にもなります。一日、一日を生きていくことを考えるしかない……」
薬物との壮絶な戦い、心の拠り所だった友人の死、消えない罪悪感と思うようにならない肉体……。
清原氏は深い闇の中にいた。