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清原和博、独占告白2時間6分。
笑みはなく、手は緊張で震えていた。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/06/29 08:00
てっきりこの半年ほどで元気になっていると……。
昨年末、TBSテレビのインタビューで懺悔した姿を見てから5カ月が経っていた。
私はその時間が「右肩上がり」に流れていると勝手に思い込んでいた。おそらく笑顔の欠片くらいは取り戻しているだろう。生きるための何かを見出しているだろう、と。
だから余計に衝撃は大きかった。
ただ1つ、不思議なことがあった。かつて持っていたものをすっかり失くし、弱さをさらけ出す清原氏に「光」を見たのだ。それは矛盾しているようだが、確かな感覚だった。
同時に「あの日」のことを思い出した。
『清原和博への告白』の取材中に、1本の電話が。
去年の晩夏、私は三河安城駅から東京へ向かう新幹線に乗っていた。携帯を手に取ると、見知らぬ番号からの着信があった。
「……ハラです……」
「あのお、この番号、登録されていないんですけど」
「キヨハラです……」
半信半疑のまま私は席を立つと、デッキに出て電話の声に耳を傾けた。
「ありがとうございました。感動しました。ただ、それだけ伝えたくて電話しました……。涙が止まらなかったです」
昨年8月10日に発売されたNumber「甲子園最強打者伝説」ではPL学園の4番・清原和博が甲子園で放った歴代最多13本のホームランを、打たれた男たちの証言をもとに振り返った。その反響を受け、書籍化(『清原和博への告白』小社刊)のために取材を重ねている最中の着信だった。
かつての英雄が逮捕され、有罪となったタイミングにもかかわらず、かつての戦友たちは迷いなく口を開いた。
電話の主はその事実に心震えたのだという。