炎の一筆入魂BACK NUMBER
愛される以上に、本人が広島を……。
“ほぼ日本人”エルドレッドという男。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/06/23 15:00
右手首骨折や右膝半月板の手術など怪我や故障に泣かされたこともあったが、それでも、常に広島にとってかけがえのない選手であり続けた。
不調の時も、なぜ広島は彼を手放さなかったのか?
広島の外国人ニック(・スタビノア)の離脱により、右の長距離砲と期待された。期待通りに65試合で11本塁打を記録し、日本で地位を確立した。ただ、常に成績が安定していたわけではない。'14年に本塁打王のタイトルを獲得した一方で、プレーの粗さも目についた。
ケガもつきまとい、1年通して働いたシーズンは少ない。
それでも球団はエルドレッドを手放さなかった。
それは、たとえ二軍暮らしが長くなっても同じ右打者の堂林翔太に対して真摯に打撃指導をするエルドレッドの姿も評価してのことだろう。
その一振りで試合の流れを変えてしまう男。
日本でキャリアを積み重ねるにつれ、エルドレッドの打撃も変わってきた。
チームとして打撃改革が行われた昨季は、つなぎの4番に入った(エクトル・)ルナの好影響もあり、右方向へつなぐ打撃も目立った。
右太ももを痛めて登録を抹消された6月まで、リーグ3位の打率.319、同2位タイの16本塁打と大きな得点源となっていた。その後はケガの影響やチーム状況もあり二軍暮らしが長くなったが、得点力が落ちたシーズン終盤には再び存在感を発揮した。
今年もさらにレベルアップした広島打線の中で、一振りで流れを変える存在となっている。
交流戦終了までの16本塁打は効果的な一発が多い。初本塁打となった4月4日中日戦は先制2ランで試合を動かし、4月12日巨人戦は新井と2本のアベック弾。5月28日巨人戦では同点2ランで試合を振り出しに戻すなど、恐怖の6番打者となっている。