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2000本目は絶不調の真っ最中だった。
青木宣親「諦めることだけはない」
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2017/06/14 08:00
メジャー6年目の青木。日米通算1678試合での2000本安打達成はイチローに次ぐ速さだった。
傍目にわかる程、構えがころころ変わった。
「去年までみたいに1番を打つのではなく、下位打線(8番か9番)を打ってるから、なかなか打順が回ってこない。調子が悪い時だからこそ、毎打席いろいろ考えていることを試したいのに、この打順じゃ1試合で3回が精いっぱい。それだとちょっと難しい」
と再び青木。6月に入ると打率も2割5分から6分の間を行ったり来たりに落ち着き、出塁率も3割1分前後という状態。打撃については「企業秘密」を貫いているため、試合後の会見でも「いろいろやってる」と言うに留まってしまうが、スタンスだのグリップだの、構えだの立ち位置だのが、見た目にも簡単に分かるぐらい変わり続けた。
「自分から諦めることだけは絶対にないですからね」
青木がそう言ったのは、初めてではなかった。
「そこはブレないし、野球をやっている以上は絶対に有り得ないと言ってもいい」
文字通りの不撓不屈。恥も外聞も捨てて、ネットで野球の技術を探ったり、好調だった頃のビデオを見たり。ヒントが見つかればすぐに練習で試し、使えそうなら試合でやってみる。良ければ続けてやっていく。ダメならまた別のヒントを探す。言わば「希望と失望の繰り返し」である。
3本のヒットで、彼の価値は変わらない。
だから、それから約3週間後の6月11日、青木がエンゼルス戦の6回に左前打を放って日米通算2000安打を記録した瞬間、複雑な気分になった。
4回の右中間二塁打が1999安打目。6回の左前打が2000本目。そして8回の右前打が2001安打目である。4月25日以来、今季2度目の1試合3安打(日本風に言えば猛打賞)だったから、そこだけ切り取れば絶好調だが、青木はこの1カ月の間苦戦し続けてきたのだ。3本ヒットを打ったぐらいでは、何も変わりようがないぐらいに。
「いつも生き残りをかけてやってる気持ちがある。そう思えばどれも自分にとっては必要な1本。どれもとにかく生き残っていくのに必要なヒットだった」
今こそ、“PROVE YOURSELF RIGHT”。「自分が正しいと証明しろ」。
メジャーで生き残るために、1本のヒットを打つために。青木の戦いは、これからも続いていく――。