酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
近藤健介の「夢の4割」実現の条件。
左打者、足、そして安打より四球!
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2017/05/25 11:30
近藤健介の2016年の打率は.265。4割打者の候補ランキング上位だったとはいいがたい選手だったが、一躍時の人となった。
メジャーには13人の4割打者が存在する。
MLBに目を移すと、1901年以降で4割打者は13人出ている。MLBのシーズン打率5傑を見てみよう。
1位 1924年 R・ホーンズビー(カージナルス) 打率.424 536打数227安打
2位 1901年 N・ラジョイ(アスレチックス) 打率.421 544打数232安打
3位 1922年 G・シスラー(ブラウンズ) 打率.4198 586打数246安打
4位 1911年 T・カッブ(タイガース) 打率.4196 591打数248安打
5位 1912年 T・カッブ(タイガース) 打率.410 553打数227安打
すべて今から90年以上前の記録。最後の4割打者は1941年、ボストン・レッドソックスのテッド・ウィリアムスが記録した.406(456打数185安打)だ。
現代野球では、MLBでも4割は「夢の記録」になっているのだ。
以前にも紹介したが、セイバーメトリクスの研究家、ボロス・マクラッケンによれば「本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になる割合=BABIPは、投手や野手の能力にかかわりなく、だいたい3割になる」。
打者でBABIPが3割を大きく超えている場合、その打者の打率は3割に近づいていくとされる。
近藤健介のBABIPは、現時点でなんと.469。打率をもはるかに上回るBABIP。セイバーメトリクス的には、近藤は「運が良くて」4割をキープしていることになる。
「このままいけば、打率は下がっていく」とデータは物語っているのだ。
左打者であることは、4割にとって超重要。
しかし、近藤健介には頑張ってもらいたい。めったにないチャンスだから、夢の「4割」に最後までくらいついていってほしい。
そのために、必要な条件を考えてみよう。
まず左打者であること。NPBの打率上位5人は、すべて左打者(右打者の最高打率は、2008年、内川聖一の.3780、歴代7位)。
左打者は一塁への距離が右打者よりも50cmほど短い。また有利と言われる右投手との対戦数が多いので、打率を上げるうえでは右打者より有利とされる。
幸いなことに近藤は左打者だ。4割に挑戦する資格はあると言えよう。