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ホークス三軍監督に就任の元スター。
佐々木誠は原石に「期待しない」?
posted2017/05/25 08:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
NIKKAN SPORTS
ホークスのちょっとした昔話。
王貞治監督は自軍の攻撃中、ダグアウトの隅で常に体を動かしていた。ある選手が不思議に思って、よく観察してみると答えに気がついた。相手ピッチャーが投げる一球一球に対してタイミングを計っていたのだ。
「特に小久保(裕紀)さんや松中(信彦)さんが打席の時、第一ストライクの直球を簡単に見逃すと『なんで打ちにいかないんだ!』と怒鳴っていました。自分のイメージではライトスタンドだったのかもしれませんね」
また、秋山幸二監督は就任時、理想のチームづくりを問われると「1番から9番まで打って、走って、守れる選手が並ぶことかな」と語った。まるで全員が秋山幸二じゃないですかと驚くこちらを見て、「フフフ」と笑みを浮かべていた。
結果的にどちらもチームを複数回のリーグ優勝、日本一に導く名将となったわけだが「名選手が名監督になる」という難しさは、いつの時代でも言われてきたことだ。
つい、理想が高くなってしまいがちなのだ。
イチロー出現前にメジャーに最も近いと言われた男。
となれば今年のホークスで、三軍を預かる新監督は果たして……。
佐々木誠・三軍監督。
かつて、イチローが出現するほんの少し前には「メジャーに最も近い選手」と言われた元スタープレーヤーが、今年から三軍を率いている。
'92年、史上2人目となる首位打者、盗塁王を同時受賞した。これは'95年にイチローが史上3人目として達成して以降、現在まで生まれていない記録でもある。打ってよし、走ってよし。そして守っても外野手として4度ゴールデングラブ賞に輝いた。
ある年の日米野球でメジャーの指揮官が「連れて帰りたい」と名指しでコメントしたことで、冒頭のごとく評されるようになった。