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内田篤人「パパがんばらなくちゃな」
復帰、控え、子供……激動の1年間。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2017/05/26 08:00
シャルケのホーム、フェルティンス・アリーナで、内田篤人は今も絶大な人気を誇る。愛嬌と闘争心が同居するサイドバックの完全復活を誰もが待っている。
試合直前で、自分の判断で出場を取りやめたことも。
「全メニューこなせたのが良かった!」
クラブの許可を得て、個人的にケアとトレーニングを受けるトレーナー吉崎正嗣氏も帯同した。万全を期したキャンプは大成功だった。
しかし、そのまま復帰へ……、とスムーズな移行とはいかなかった。スペインキャンプを終え、ドイツ国内での練習試合での起用もヴァインツィアル監督は検討したようだが、今度は左内転筋を痛めメンバーを外れた。
2月上旬にはドイツ杯3回戦ザントハウゼン戦で、前々日まで先発組で練習していたが、この時も本人の判断で止めている。
2月下旬には今度は腰から背中に痛みが出て、注射も打っている。メディカルスタッフに止められて、練習を休まされることもあった。「とりあえず3日は待ってくれって言われてさ」などと不本意そうに話していたのもこの頃だった。
「コーチと監督がひそひそ話してて……」
3月に入ってからは痛みを訴えることもなく、練習に合流した。3月下旬代表戦期間中に行われた練習試合で、ようやくフル出場。シャルケの中で代表招集されていない若手と組んでの試合で、かみ合わないところも多かったがそれでも「いつぶりかわからない」(実際は約2年ぶり)のフル出場は、感慨深かった。この時は目標とした「90分間のプレー」に加えて収穫があった。
「次の日になっても痛みが出なかった。それがなにより嬉しいんだよね。試合をやった翌日ならではの筋肉痛はあるんだけど」
半ば筋肉痛を楽しむような、そんな口ぶりだった。ようやくそこまで来たわけだ。
だが、その後はチーム事情も大いに影響して、思い描いたとおりには進まなかった。普通どおりに練習に参加しながらも試合では出場なし。
それでも、チャンスの気配は何度もあった。たとえばベンチ入りしたダルムシュタット戦、2日前にはこんなことがあった。
「コーチが監督とちょっとひそひそ話してて、そのあとコーチから『今日はお前全力でやれよ』って言われて。多分、俺のこと監督に話してくれたんだろうね」
当初は19人目としてのメンバー入りだったが、当日の練習を見て18人目に繰り上がった。
「とりあえず良かったよね。見てくれてるっていうことだから」
と素直に喜んでいたが、内心はどうだっただろうか。