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内田篤人「パパがんばらなくちゃな」
復帰、控え、子供……激動の1年間。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2017/05/26 08:00
シャルケのホーム、フェルティンス・アリーナで、内田篤人は今も絶大な人気を誇る。愛嬌と闘争心が同居するサイドバックの完全復活を誰もが待っている。
内田をよく知らない新しいスタッフも。
内田がシャルケに入団して7シーズンが経過した。
最初の1年は特に華々しく、ドイツ国内ではポカールで優勝、欧州ではCL準決勝に進出した。ラウール、ノイアー、ファルファン、ドラクスラーといった当時のスペシャルな選手たちはシャルケをすでに去ったし、フンテラールも今季限りで退団する。当時からの主力で残っているのは内田とヘベデスくらいなものだ。
一方で、クラブは体制の立て直しに着手したばかりだ。'16年にはハイデルSDらを迎え上層部も入れ替わった。バインツィアル新監督が開幕5連敗しても、最終的に10位という不甲斐ない結果をだしても交代の噂すらたたないのは、長期的な立て直しの最中という解釈からだろう。
'16年以降のスタッフに内田はいまひとつ馴染みがなく、「誰もおれのことを知らないからなー」とぼやく場面もある。だから、なかなか内田の起用に踏み切らなかったチームと決別し、フレッシュな環境を選択するのもひとつの手。もちろんシャルケでスタメンをもう一度奪いに行くのもあり。珍しく内田の去就が注目を集める夏になる。
「ヒゲがあるとね、子供がさわってくるの」
2月以降、時間とともに、内田のヒゲは再び伸びてきた。今回は奥さんからの剃れという指令は受けていないようだ。ヒゲを伸ばしたい理由もある。
「ヒゲがあるとね、子供がわかるみたいで手を伸ばしてさわってくるの。表情も出てきて可愛くてさー」
すっかりデレデレしながら、こうも言う。
「パパがんばらなくっちゃな」
5月13日ホーム最終節HSV戦は、子供をスタジアムに連れて行きお披露目もした。所属事務所からリリースもでて、内田のヒゲは再び剃られていた。
怪我で空白になってしまった2年の間に、内田には大きなモチベーションができた。もう一度輝くために、それはなによりも必要なものかもしれない。
来季こそ、内田はもう一度トッププレイヤーに返り咲く。その準備はできている。