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キタサンブラックが継承する
無敗ダービー馬ミホノブルボンの伝説。
posted2017/05/18 12:50
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Keiji Ishikawa
武豊 キタサンブラックは時々、坂路を3本。
デムーロ 3本! すごいね。
――昔、ミホノブルボンが坂路を4本やってましたね。
武豊 でも、当時は今より(坂路の距離が)短かったから。今3本やっているのはキタサンブラックだけじゃないかな。
デムーロ ワォ~!
Number927号「日本ダービー特集」で実現した武豊とM・デムーロのダービージョッキー対談。天皇賞(春)の二日後に行われたこともあり、話題は連覇を達成したキタサンブラックの強さの「秘密」に及んだ。そこで、主戦ジョッキーの武豊が強調したのが、今年緒戦の大阪杯(GI)に向けて、清水久詞調教師がキタサンに課した「坂路3本」のハードトレーニングについてである。1日2本乗るのでさえ、滅多に聞こえなくなった現代において、この回数は驚異的であるという。
ハードに鍛えて強くなったと聞くと、オールドファンには、どうしても思い出さずにはいられない馬がいるだろう。故・戸山為夫調教師の最高傑作「第59回日本ダービー馬」ミホノブルボンだ。
ダービーの焦点は無敗の2冠馬という興味に絞られた。
ちょうど25年前、1992年の日本ダービーは今年の混戦模様とは違い、「1強によるダービー」だった。
皐月賞を見事な逃走劇で圧勝したミホノブルボンが、前年のトウカイテイオーと同じく無敗の2冠馬となるのか――。ファンの興味は一点に絞られた。
短距離向きの血統であることに加え、逃げ馬には不利な15番枠からの発走。不安要素はあるにはあったが、いざスタートすると、ミホノブルボンは周囲の心配をあざ笑うかのように先頭に立ち、他馬に影をも踏ませぬ逃走劇で、2着のライスシャワーに4馬身差をつける圧勝だった。ラジオ実況アナウンサーが「これは強い、とてつもない強さ!」と叫んだほどで、今から考えると単勝が2.3倍もついたのに驚くほどだ(ちなみに前年のトウカイテイオーは単勝1.6倍だった)。