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キタサンブラックが継承する
無敗ダービー馬ミホノブルボンの伝説。
 

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2017/05/18 12:50

キタサンブラックが継承する無敗ダービー馬ミホノブルボンの伝説。<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

ディープインパクトのレコードを破ってのキタサンブラック連覇となった天皇賞・春。武は自らが作ったレコードをさらに更新する形に。

最強馬の凄さは「坂路1日4本」「カイバ9升」にも。

 ミホノブルボンが「スパルタの鬼」戸山為夫調教師に見いだされ、その実力を開眼させたのは広く知られている。坂路コースの距離が延長される前だった当時、「1日3本」が標準だった中、2歳時から「1日4本」のメニューをこなして、ミホノブルボンは強くなった。

 デビュー前の坂路調教で500mを29秒8という「とてつもない時計」で走破して、関係者の度肝を抜いたほどの天性のスピードに加え、飛びぬけて強靭と形容していい、消化器系の内臓の強さを、ブルボンは持っていたという。

 普通なら6升食べれば「食いがいい」と言われるところを毎日9升のカイバを残さず食べた。食べ過ぎは血液が濃くなってコズミ(筋炎や筋肉痛)の原因になるというが、戸山はそこを逆手にとってブルボンの運動量をさらに増やし、鍛えぬき、ついに無敗でクラシック2冠を制覇、その年の年度代表馬に選出されるまでになったのだ。

「この馬でディープインパクトの仔を倒してやろう」

 戸山は「血統や馬体など、素材的には少し見劣る馬をハードに鍛えて強くする」という理念を掲げていた。

 その理念について、キタサンブラックを管理する清水調教師も共感する部分があるという。

「僕は戸山先生と直接お話しさせてもらったことはないですけど、先生は高額な馬に、自分のところの、そうでない馬で勝ちたいという意識があったそうです。僕もそういう気持ちは少しはありますよ。キタサンブラックは超がつくほどの良血ではないですし、いままでうちの厩舎から出たオープン馬もそんなに特別な血統ではなかった。それほどでもない血統でオープンにまで上がってきてくれるので、この馬でディープインパクトの仔を倒してやろうという気持ちは、キタサンブラックに限らずありますよ」

 ミホノブルボンは生まれたばかりのころの評価は非常に低く、わずか700万円の低額で取引されたと言われる。キタサンブラックもデビュー前はそれほど期待がかけられた馬ではなかった。

 だが、両馬ともに、天性の秘めたる才能に加え、過酷なトレーニングに耐え、より高みへとたどり着くだけの強靭な肉体を持っていた。清水は今回の「坂路3本」のトレーニングの意図をこう語る。

「もっと鍛えられる余地があり、今のこの馬ならもっと強い負荷にも耐えられる。その判断がまずあって、やり方を色々と検討して選んだのが坂路を3本というメニューでした。人間の陸上競技でも中学生の選手とオリンピック選手では練習の量も中身も全然違いますよね?」

【次ページ】 ミホノブルボンの死の1カ月後、志を継ぐ馬が……。

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