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千両役者・闘莉王がJ2得点王に!?
今も変わらぬサッカー談義と後輩愛。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/05/03 07:00
ゴールを奪って破顔一笑する闘莉王。こんなにも喜怒哀楽が豊かな男が、愛されないはずがない。
千両役者ぶりに正直、笑いがこみあげてしまう。
ヘッドでの追撃弾、右足での逆転弾、そして左足での決勝弾。持てる全ての武器を駆使し、強さと上手さも融合させてゴールネットを揺らし続けた。ハットトリック。結果でもプレーでも魅了する、あらためて千両役者である。
勢いはまだ収まらない。続く第9節、第10節でも連続得点を挙げ、今や完全にチームのエースに。センターバックとして日本代表で戦い、南アフリカW杯も経験。浦和ではリーグとACLを制覇し、名古屋でもクラブ初のリーグ戴冠をもたらしたDFが、本職ではないストライカーとして輝く。
いくら攻撃センスは折り紙付きと言われてきた選手とはいえ、ここまでの闘莉王は正直、笑いがこみあげてしまうほどの活躍である。
J2の無名選手の大活躍を予期したほどの目利きぶり。
桜も散ってしまった4月某日。新幹線で西に向かった。
開花シーズンが終わっても、京都は国内だけでなく海外からの来客も多い街である。ごった返す京都駅の喧騒をかき分けて到着したのはローカル感漂う駅。そこに闘莉王は現れた。
すでに馴染みの店も数軒できたようで、新天地を楽しんでいる様子。名古屋時代と変わらぬ素顔の彼が、そこにいた。
そしていつもと変わらぬサッカー談義が始まった。相変わらず彼は他チームの試合をよく観ていた。自宅のテレビには、昔も今も常に何かの試合が流れているという。
以前驚いた出来事がある。あるJ2下位クラブで助っ人選手が好プレーを続けていた。とはいえ、まだサッカー界やファンにも名が知れ渡っていない段階だった。しかし闘莉王は「あいつはめちゃくちゃいいよ。ボールを奪わせたらJリーグでトップ。J1でも絶対にできる」と目をつけていた。その選手は後に、J1強豪クラブへ移籍した。「引退したら、スカウトでもやろうかな。いいスカウトになれるやろ」と彼は笑っていた。
闘莉王は海外トップレベルにも忌憚なく切り込む。「最近のバルセロナは前より守備が少し落ちた気がする。マスチェラーノやピケは素晴らしい選手だけど、俺の見方ではやっぱり純粋なセンターバックじゃない」と視線は世界中に向けられている。