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千両役者・闘莉王がJ2得点王に!?
今も変わらぬサッカー談義と後輩愛。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/05/03 07:00
ゴールを奪って破顔一笑する闘莉王。こんなにも喜怒哀楽が豊かな男が、愛されないはずがない。
「俺の武器は何かわかるか? ここと、ここだよ」
闘莉王は自らについても、こう話し始めた。
「俺の武器は何かわかるか? 周りはどう思うかわからないけど、俺は自分の高さも強さもすべて並だと思っている。スピードだってない。ヘディングは(中澤)佑二さんの方が絶対に強い。お前は高さだって、足元だってある。俺よりもいいものを持っているぐらいだよ。それはここまで見てきた俺だからわかること。でも、お前に足りないものがある」
そう言うと、闘莉王が「ここと、ここだよ」と、右手の人差指で頭を指し、次に手のひらで胸を叩いてみせた。
「考える力と、自信。俺の本当の武器は、これだよ。ヘディングでも強さでもない。お前はもっとサッカーを考えないといけない。考えて、それを成功体験にしていくことで、自信になる。持っている素材は間違いないんだから」
それは、後輩に送る助言に留まらず、「俺を超えていけ」とでも言っているかのような言葉だった。
「本当の世代交代は実力で追い越して初めて成り立つ」
闘莉王には持論がある。
名古屋では年を追うごとに、周囲を見渡すと経験も浅く、実力的にもこれから伸びていく選手ばかりとなった。2010年にリーグ制覇し、2011年にも2位と、強さを誇ったチームだったが、クラブは人件費の削減という名目で主力選手を軒並み放出していった。
「こんなことはあり得ない。なんでまだみんないいプレーができる選手たちが、出ていかないといけないのか」
闘莉王は当時から異を唱え続けていた。牟田の成長を促そうとした裏側には、彼のこんな考え方がある。
「本当の世代交代は、若い選手が実力で上の選手を追い越して、初めて成り立つ。上の選手がチームを出ていって、未熟な選手を若手の育成ということで起用するのは、世代交代でも何でもない。ポジションは与えられるものじゃないんだから。こういうやり方は、結局はどこもみんな失敗している。
だから、俺はまだまだ負けていないよ。牟田のような立場の選手が力で俺を上回れば、俺は潔く辞めるよ」