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異例すぎるモナコ欠場インディ参戦。
アロンソの挑戦はホンダあってこそ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2017/04/23 07:00
4月12日、バーレーンGP前に会見したアロンソ。決勝では力走するもパワー不足は明らかで、残り2周で自らマシンを止めた。
F1ドライバー、チーム側から批判が続出するが……。
メキシコ出身で、少年時代はテレビでよくインディ500を観戦していたというセルジオ・ペレス(フォース・インディア)が、「確かにインディ500は世界のベストレースのひとつだけど、F1ドライバーがモナコGPを欠場するなんて考えられない」と語れば、昨年のドライバーズ選手権3位の若手のホープ、ダニエル・リカルドも「僕はモナコに出られないのは嫌だね」と驚きを隠さない。
そのリカルドが所属するレッドブルの代表クリスチャン・ホーナーは、その立場から、決断を許したマクラーレンを次のような言葉で厳しく批判した。
「インディ500は私がこれまで見てきた中で最もイカれたレースだ。それにテストなしで臨ませようとしているマクラーレンのザク・ブラウン(エグゼクティブディレクター)は、どうかしている」
グラハム・ヒルのように異なる大舞台で優勝したい。
だがこのような批判にも、アロンソは動じない。
「彼らの主張はもっともだ。昨年までチームのトップだったロン・デニスがいたら、この挑戦は実現していなかったと思う。そして、何より今年のマクラーレン・ホンダのマシンに競争力があったら、このような決断はしていなかったと思う」
しかし、アロンソのインディ500への参戦は、現状から逃避するためでもなければ、ホーナーが批判するように周囲にそそのかされて下した決断でもない。彼にとって、インディ500がレーシングドライバーとしての夢の舞台だからだ。
「F1で勝つことはもちろん素晴らしいことだ。でも、ひとつのシリーズにこだわらず、世界最高の異なるレースに挑戦したドライバーがいる。その夢を僕も追いかけてみたい」
そのドライバーの名前は、グラハム・ヒル。1963年にF1のモナコGPで優勝したヒルは、'66年にインディ500で勝利し、さらに'72年にル・マン24時間も制した伝説のドライバーだ。この世界3大レースをすべて制した3冠ドライバーは後にも先にもヒルしかいない。
'06年にモナコGPを勝ったアロンソにとって、このインディ500への挑戦は3冠へ向けた2つ目のステップ。その夢をだれが笑えるだろうか。