松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹が珍しく音に反応した時。
マスターズ優勝は「小さく狭い場所」。

posted2017/04/06 11:20

 
松山英樹が珍しく音に反応した時。マスターズ優勝は「小さく狭い場所」。<Number Web> photograph by AFLO

過去2年連続でトップ10に入り、松山英樹とオーガスタの相性は悪くない。しかしそもそも彼は世界ランク4位、堂々たる優勝候補なのだ。

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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「このオーガスタに来ている誰もがサンデーアフタヌーンに勝利を掴み取ろうとしている。誰もが優勝を望んでいる。でも、勝者として立つことができる場所は、とても小さくて狭いんだ」

 この言葉の主はジョーダン・スピース。2014年にバッバ・ワトソンと優勝争いを演じて惜敗し、2015年は見事、初優勝。しかし、昨年は大会2連覇に迫りながら最終日の12番で2度も池に落とし、「7」を叩いて崩れ落ちた。

 あのハートブレイキングな敗北後、スピースの心の傷はほぼ1カ月、癒えなかった。いや、彼の心の傷は今も癒えてはいない。

「サンデーアフタヌーンに優勝会見の席に座り、『みなさんのおかげです。ありがとう』とスピーチするときまで癒えないと思う」

 あれから1年。スピースは全身全霊をかけて今年のマスターズ優勝を目指してきた。しかし、今年は初日から最終日まで「スピースが12番ティに立つたびに全世界の視線が集まる」とまで言われている。

 そこで何が起こるかは、オーガスタの魔女のみが知る。スピースにも誰にもわからない。

「予想もしていないことが起こるのがゴルフ。とりわけ、このオーガスタでは予期せぬことが起こる」

 だからこそ、スピースは勝者が立つことができる場所は「とても小さくて狭い場所」だと表現し、そこに立つことをゴルファーの誰もが夢見るのだろう。

滅多に物音に反応しない松山が、仕切り直した。

 昨年大会の最終日。12番でスピースが池に落とした瞬間の大観衆のどよめきは、13番のフェアウエイから第2打を打とうとしていた松山英樹の耳に届いた。

「ジョーダンが池に入れたとわかった」

 滅多に物音に反応しない松山が、このときばかりは珍しく仕切り直した。スピースは「7」を叩いて大失速。それは松山にとっては千載一遇の“もらったチャンス”だった。

 しかし、松山は13番で2メートルのイーグルパットを外し、14番も2メートル半のバーディーパットを沈めることができなかった。ここぞというときに攻め入ることができなかった。奇跡のような“もらったチャンス”を生かすことができず、7位に終わったことは、逆に彼の勝利への意欲を一層燃え上がらせた。

【次ページ】 年末の絶好調は過ぎ去ったが、それでも……。

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