サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ハリルと選手、理想のズレは大丈夫?
今も代表に残るポゼッションの影。
posted2017/03/30 12:50
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Takuya Sugiyama
「無失点で終えられたのは奇跡に近い」
ロシアW杯最終予選のタイ戦後、吉田麻也はそう試合を振り返った。
「4点とれたのは大きいです。悪いときでもこうやって勝ち点を積み上げていくというのは、予選を通して大事になっていきます」と一定の評価も示したが、試合内容については厳しい口調だった。
香川真司の先制点、岡崎慎司の代表通算50ゴールが決まり、前半に2点リードした日本だが、グループ最下位のタイ相手に苦しい時間帯が続いた。久保裕也のゴールでリードを広げたものの、攻守にわたり終始安定感を欠いた。効果的な縦パスを入れられず、ボールの失い方も悪く、試合のイニシアチブを握ることができなかった。
岡崎、吉田が語る苦戦の原因。
岡崎は理由について、こう話している。
「大きな原因というのは引きすぎて、前に押し上げられないということだった。ゴール前まで遠いなと感じたし、カウンターサッカーをするチームが陥りやすい罠に陥った。タイも本当にいいチームだったけど、ボール回しで焦りすぎている部分が多かった。もうちょっと展開してもいい場面があったと思う。(選手同士の)息はあっていなかったですね」
一方、吉田は自分たちのミスを強調する。
「ラインは高かったと思うんですけど、選手の距離感、失い方が悪かった。無理なクサビ(のパス)を入れる必要もなかったと思うし、後ろでちょっとリスクをかけすぎたというのもある。押し込まれていても、変に繋いだりしてしまった。プレーを切ることも必要だったかなって思います。基本的には自分たちのミス」
UAEにアウェーで快勝したが、ホームではまったく違う一面を露呈することになった。しかし、この問題は過去にも見られたものである。
「引いて守ってくる相手に対しては、今までも縦に速くということを意識しすぎて、個人のアイディアだけ、個々でがんばっている感じがする。まだまだ、連動的にはなっていないと思います。チームとしてはもっと成熟させなくちゃいけない」という岡崎の言葉が、現在の日本代表を的確に表現していた。