野球善哉BACK NUMBER
全校生徒800人で、野球部は10人。
不来方の快挙は危機の裏返しだ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/04/03 08:00
甲子園で戦いきった不来方は試合後、監督と記録員、部長合わせて計13人でアルプス席に感謝を告げた。
単純に10人の部員しか入ってこなかった2つの理由。
つまり、不来方の部員が10人しかいないのは、街に人口が少ないからでも、少子化の影響を受けたからでもないのだ。単純に、野球部に10人しか入ってこなかったということなのである。
これには2つの理由がある。
ひとつは、指揮官の小山健人監督が部員の勧誘に積極的ではないということ。
もうひとつは、社会的な野球人気の衰退である。
小山監督は、自身の方針について持論をこう語る。
「僕は野球の試合ができればいいくらいに思っています。大人数でやることが素晴らしいことだとは思っていません。部員数が多ければ多いなりの大変なことがあると思いますし。少なければ少ないなりの苦労もあるんですけど、9人いれば野球はできますから。
試合のために9人の部員を確保してあげたい気持ちはありますけど、それが10人でも11人でも、30人でも100人でも、その時の生徒たちが楽しく野球に打ち込める環境づくりが大切。無理やり部員数を増やしたいとかは考えていないです」
「好きで始めた野球を嫌いにならないようにしたい」
小山監督には、高校野球の一般的な監督とは一線を画す大らかさがあり「高校の野球部はこうでなければいけない」というクラブづくりをしていない。
「無理に部に入らせても本人がつらいだけだと思うので、野球が好きでやりたいという子を何とかしてあげたいですね。高校野球を含めて、部活動での辛い経験や苦労したことが社会に出てから役に立つと言いますけど、僕は好きで始めた野球を彼らが嫌いにならないようにしたいと常に思っています」
そして、より深刻な問題なのは2点目の理由だ。