個性を引き出した一方で、現実からも目を背けずに。

　個人的には、小山監督の指導理念は素晴らしいものだと思う。

　無理やり野球をやらせるのではなく、野球が楽しいものだと気づいた子どもたちと一緒に汗を流す。その指導理念に高校野球特有の古臭さはなく、選手たちがのびのびと競技に臨むことを基本としている。部員が10人でも昨秋の岩手大会を準優勝できたのは、その指導法が選手たちの個性を引き出したからに他ならない。

　しかし、現実からも目を背けてはならない。

　繰り返すが、全校生徒が800人いる高校で、野球部員が10人しかいないのだ。彼らの雄姿に胸を打たれると同時に、刻一刻と迫る野球人口減少にも何か手を打たなければならないはずだ。