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田中浩康、DeNAで“34歳の新人”に。
2番・二塁、古巣神宮での開幕戦へ。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byKyodo News
posted2017/03/27 07:00
筒香、梶谷ら主軸の前で、田中がシュアな打撃を見せる。ラミレス監督の“プランA”がハマれば、DeNA打線はさらなる厚みを増す。
「目の前の、一瞬一瞬をすごく大切にしている」
だが、当の田中は記者の問いかけを半ばさえぎるように言う。
「申し訳ないんですけど、いまは先のことを考えてる感じじゃないので……。目の前の、一瞬一瞬をすごく大切にしている。1分1秒を無駄にできないというか、貴重な時間を過ごしていることは間違いないです。選手としてユニフォームを着させてもらっているわけですから」
昨オフ、田中に届けられた「コーチ就任の打診」。考えてみれば、そのフレーズはオブラートに包まれた苦い薬のようなものだ。セカンドキャリアの確約というポジティブさがオブラート。だが同時に「戦力としては考えていない」という酷なメッセージも飲み下さねばならない。
加えて、ドラフトで最上位指名(2004年・自由獲得枠)を受けたという事実も重い。入団時から、そして引退後のことまで、我が身を慮る姿勢を示してきてくれた球団を去る、その決断に相当の覚悟を要したことは想像に難くない。
それでもナタを振り下ろし過去を一度断ち切ったからこそ、田中がいま、「新人だった時の雰囲気に似ている」と感じるのは自然なことなのかもしれない。
ベイスターズの雰囲気は……シティボーイかな(笑)。
34歳の“ルーキー”は、地方から上京したばかりの新社会人のように、初めて触れる街の空気に刺激を受けている。
ベイスターズの雰囲気を問われると、ユーモアを交えて言った。
「横浜の街の雰囲気だなっていうのはありますね。『あれじゃん』『これじゃん』みたいな……何て言うんだろう、シティな感じというか。ぼくは関西人だし、前のチームも関西人が多かったので、ちょっとノリが違うなっていうのは感じますね。シティボーイが多いから(笑)」