バレーボールPRESSBACK NUMBER
男子バレーの頂点はサーブの東レ。
「安全に入れていく」からの転換。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2017/03/23 08:00
チーム最年長32歳の米山裕太は、試合後、「強いチームが勝つと証明することができた」と誇らしげに話した。
4.2だったサーブ効果率が一夜で16.9%に。
米山裕太は振り返る。
「1月の広島大会(7~8日)の初戦でサーブが全く入らなくて、その日のうちに増村さんと話しました。効果のあるサーブを打っているときの動画と、その日の試合の動画のフォームを見比べてみたら、体が左側に傾いていたんです。傾き以外、サーブの打ち方は何も変わっていない。増村さんから傾きだけ意識して打てば大丈夫と言われて、翌日に気をつけて打ったら、急に良くなったんです」
初日、4.2%だったサーブ効果率が一夜にして16.9%までアップした。
小林監督によると、米山は昨年12月の天皇杯までは、「なかなかサーブが上達しない選手のひとり」だった。しかし、こうしてシーズン中に修正を加えて徐々に効果率を上げ、3月19日、優勝を決めた試合では3本のサービスエースも記録した。
小林監督は語る。
「今シーズンのMVPをもし僕が選ぶとすれば、間違いなく米山です。米山の復活が東レの復活であると言ってもいいくらい、米山の活躍がチームにとって大きかったですね」
米山は入部11年目。全日本でも活躍した東レの顔的存在である。しかし、昨シーズンは故障の影響でなかなかプレーパフォーマンスが上がらず、若手の台頭もあり、わずか21試合56セットの出場にとどまった。
「正直、米山はもうダメかなとも思いました」
米山は昨シーズンをこう振り返る。
「なんで試合に出られないんだという、もやもやした思いがありました。それまでは自分が中心となってやってきたチームに、若い選手が出てきて、自分としてはまず戦う相手がチーム内に現れた。若い選手が育つのはチームにとってはいいことなんでしょうけど、なかなか割り切れなくて、試合に出られない日が続くうちに、それまで築いてきた自負とか自信とかがボロボロになってしまっていたんだと思います」
リーグ終了後、リオデジャネイロオリンピック世界最終予選のメンバーに選ばれたが、その大会でオリンピック出場権も逃す。
「オリンピック予選を終えてチームに戻ってきたときは、見ているほうもつらいくらい、精神的にボロボロでした。昨シーズンのこともあったので正直、米山はもうダメかなとも思いました。でも彼の実績やチームに残した功績を考えると、このまま終わらせてしまうのは惜しい。今シーズンのリーグ開幕前、もし、このまま状態が上がらないようならリーグが終わったあとに、また進退について考えようと米山には話しました」(小林監督)