バレーボールPRESSBACK NUMBER
男子バレーの頂点はサーブの東レ。
「安全に入れていく」からの転換。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2017/03/23 08:00
チーム最年長32歳の米山裕太は、試合後、「強いチームが勝つと証明することができた」と誇らしげに話した。
ジャンピングフローターが上手い選手をモノマネ。
特筆すべきは、東レには強力なジャンピングサーブを打つ「ビッグサーバー」が少ないことだ。スターティングメンバーのうち3名が、レシーブを乱すのが難しいと思われてきたジャンピングフローターサーブを打つ。
そこで、まずはジャンピングフローターサーブの強化に着手した。アメリカ代表のミドルブロッカー、デイビット・リー選手のジャンピングフローターサーブの、高い効果率に着目した。
ミドルブロッカーの富松崇彰は振り返る。
「最初はモノマネですよね。リー選手の動画を見て、コートエンドのいちばん左に立って、対角に向かって端から端に、とにかく強く打とうと意識して練習しました。対角に打つことで、正面に打つより距離が長くなります。その分、エンドラインを割るアウトが減るし、ボールに変化も起きる。そうやって心掛けて練習しているうちにどんどん相手レシーブを崩せるようになったんです」
選手同士で「攻めていけよ」と声かけが。
最も大きかったのは、選手たちの心理状態の変化である。富松は続ける。
「“攻めるサーブを打つ”というチーム方針がはっきりと決まったおかげで、最初はミスをしてはいけないと思っていた選手たちが、攻めた結果がミスならオッケーという意識にどんどん変わっていきました。試合中、入れていった消極的なサーブを打つ選手がいると、今のはなんだよ、攻めていけよ、と選手同士から声が飛ぶようになりました」
もちろん勝負を懸けた強いサーブを打つには、確かなテクニックが必要だ。その正確さを保つために一役買ったのが、今シーズンから強化スタッフに加わった崇城大学男子バレーボール部の増村雅尚監督だった。増村監督は小林監督と同じ筑波大バレーボール部出身。現役時代は全日本選手として活躍し、引退後はバレーボールの動作解析の第一人者として全日本の強化にも携わったことがある。