“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
選手権決勝5-0から62日目の再戦。
青森山田と前橋育英の因縁は続く。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/03/20 07:00
選手権では、2回目の決勝進出を果たした前橋育英を、同じく2回目の決勝進出だった青森山田が下して初優勝を飾っている。
「最後の最後でのタフさ。そこを教えてもらった」
すると前半のお返しとばかりに、青森山田が猛攻を仕掛け、後半アディショナルタイムに右サイドでFKを獲得する。GK飯田もゴール前に飛び出して行き、全員でゴールを奪いに来た。そして、キックがファーサイドに届くと、DF鍵山慶司がヘッドで折り返し、そのボールに飛び込んだのは郷家だった。郷家が倒れ込みながらも、右足で執念のゴールを押し込んだ――土壇場での同点ゴール。
試合を振り出しに戻すと、そのまま試合はタイムアップの時を迎え、再戦は2-2のドロー決着となった。
「最後の最後でのタフさ。そこを教えてもらった。試合後に、『後半はもうあっぷあっぷだったよな。そこで頼りになる選手がGKを含めて、DFラインから出てこないといけないのが明確になったな』と話をした。勝った負けたではなくて、今の前橋育英に足りない部分が明確になった。それが大きな収穫。青森山田は本当に良いチーム。やって良かった」
望んだ決戦に、山田監督は満足げな表情を浮かべていた。
「引き分けは凄く悔しい」「こんなんじゃ終わらない」
当然、この試合で何かが決する訳ではないし、前述したようにお互いがベストの状態で戦ったわけでもない。ただ、両者の間に横たわる因縁は、この一戦でさらに深まったことは間違いない。
「主力3人がいないのに引き分けは凄く悔しいし、自分達の力の無さを感じる。あの3人が入って来たら、前橋育英はもっと強固なものになると思うので、本当に怖い相手」(小山内)
「青森山田はこんなんじゃ終わらない。彼らは(高円宮杯U-18)プレミアリーグでかなり磨かれていくはず。相当強くなって、ハードルの高さもこの試合とは比べ物にならないくらい高くなっていると思うので、自分達もそれに負けないように頑張って、次は必ず勝ちたい」(田部井涼)
前橋育英がライバルに突きつけた“挑戦状”は、今季における激戦のプロローグとなった。
最後に郷家はこの試合を振り返って、こう一言つぶやいた――。
「僕らも火が点いたけど、多分、僕らが彼らにより火を点けたと思う……」
黄色と黒が織りなす縦縞の炎と、緑色の炎。次に相まみえるときまで、燃え盛る両者の炎が収まることはないだろう。因縁という燃料がある限り。