スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
4年前はリーガ3部、今季はコパ決勝。
苦労人が揃うアラベスのリベンジ劇。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2017/03/05 07:00
戦力差があっても逞しくサバイバルするアラベス。彼らの奮闘があるからこそ、リーガの戦いは一筋縄でいかない。
元バルサの逸材アタッカーが、右サイドバックに定着。
一方、イバイ・ゴメスは非凡なセンスとベッカム顔負けの鋭く曲がって落ちるキックを持ち味とし、とりわけビエルサ時代にスーパーサブとして活躍した選手だ。ここ数年はケガに泣き、アラベスに移籍してきた今季も当初はなかなか調子が上がらなかった。しかし過密日程が始まった1月以降は出番を増やすにつれ、らしいプレーが見られるようになってきた。
雑草組ではキコ・フェメニアの変貌ぶりにも驚かされた。17歳でエルクレスのトップチームデビューを果たし、20歳でバルセロナに引き抜かれた逸材アタッカーは、その後バルセロナ、レアル・マドリーの両Bチームで監督の信頼を得られず、冷遇される日々を送っていた。
それがアラベスに移籍した昨季からは、ポジションを右サイドバックに移したのをきっかけに定位置を確保。今季も攻守に安定したパフォーマンスを維持しており、最近ではビジャレアルやバレンシアからのオファーが報道されている。
指揮官もスペインの地でリベンジを果たしている。
挫折を経験した後に再びチャンスを掴んだという経歴は、監督のマウリシオ・ペジェグリーノにも当てはまる。
ペジェグリーノはバルセロナとバレンシアで活躍したセンターバックで、アラベスでは現役最後のシーズンを過ごした。引退後はバレンシア時代に師事したラファ・ベニテスのアシスタントとしてリバプールやインテルで学び、2012-'13シーズンにバレンシアで監督デビューを果たしたのだが、古巣での挑戦は僅か半年足らずで終わっている。
その後戻った母国アルゼンチンでも大きな成功は掴めず、エストゥディアンテスとインデペンディエンテで成績不振による解任を経験。そんな矢先に届いたスペイン復帰のオファーは、彼にとってもリベンジのチャンスだったのだ。
今季のチーム得点王はMFエドガル・メンデスの7ゴール(リーガ3点、コパ4点)。決して得点力は高くない。それでも大幅にメンバーを入れ替えながら週2試合の過密日程をこなし、リーガとコパの双方で結果を出し続けられた秘訣は、誰が出ても揺るがない統制された守備組織にある。