スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
4年前はリーガ3部、今季はコパ決勝。
苦労人が揃うアラベスのリベンジ劇。
posted2017/03/05 07:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
試合終了のホイッスルと共に、夜空に勢いよく花火が打ち上がった。
バンバンと弾ける花火の爆音をよそに、青白に染まったメンディソローサのスタンドが揺れる、揺れる。
ファンと共に飛び跳ねる選手たちの元に、スタッフが黒いTシャツを配って回る。それを着た彼らの胸には、バスク語で「俺たちの時」を意味する「GURE GARAIA」と書かれていた。
2月8日、デポルティーボ・アラベスはセルタとの準決勝を2試合合計1-0で制し、クラブ創立96年目にして初めてコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)の決勝に進出した。
バレンシア対ヘタフェのファイナルとなった2007-'08シーズン以降、決勝の舞台に立ってきた5大クラブ(バルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、セビージャ、アスレティック・ビルバオ)のいずれとも当たらない組み合わせの妙があったとはいえ、1部昇格1年目での決勝進出は史上6チーム目となる快挙だ。
ましてやアラベスは、4年前まで3部で戦っていたクラブである。
UEFA杯でリバプールと壮絶な打ち合いをしたことも。
バスク州の州都でもあるアラバ県ビトリア・ガスティス。バスクではビルバオに次いで多い24万人超の人口を抱えるホームタウンを持ちながら、アラベスのクラブ規模は2大クラブのアスレティック・ビルバオとレアル・ソシエダには遠く及ばない。
本拠地メンディソローサのキャパシティーは2万人弱で、ソシオは約1万4000人。1921年の創立以来、プリメーラ所属は今季でまだ12シーズン目で、全盛期と言えるのは5年連続でプリメーラに籍を置いた1998-'99から2002-'03シーズンだ。
その間には2度のUEFAカップ出場を果たしており、2000-'01シーズンには初出場にして決勝進出を果たし、ヨーロッパ中の注目を集めた。リバプールと派手な打ち合いを繰り広げた末に4-5で競り負けたこの一戦は、同大会史上最高のファイナルとして記憶されている。