スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
4年前はリーガ3部、今季はコパ決勝。
苦労人が揃うアラベスのリベンジ劇。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2017/03/05 07:00
戦力差があっても逞しくサバイバルするアラベス。彼らの奮闘があるからこそ、リーガの戦いは一筋縄でいかない。
3部降格など迷走を経て、今季1部復帰を果たす。
だがこの頃に負債を溜め込んだ代償として、クラブの経営状態はみるみるうちに悪化。2003-'04シーズンに2部降格の憂き目に遭うと、ウクライナ系アメリカ人のディミトリ・ピーテルマンが経営権を握った'04年以降は経営、成績ともに迷走を極める。'07年には財政難から倒産法を申請し、2009-'10シーズンにはとうとう3部降格に至った。
その後、救世主となったのはホセアン・ケレヘタという人物だった。バスケットボールクラブのオーナーも務めるケヘレタがクラブを買収。これを機にクラブは再建の道のりを歩み始め、2013-'14シーズンに2部復帰。そして昨季は2部を制して11年ぶりの1部復帰を果たした。
そして迎えた今季、アラベスは同じ昇格組のレガネスやオサスナが低迷するのを尻目に、コパで躍進。リーガでも降格危機とは無縁の中位を維持している。
まるで中山雅史のような魂を持つ、トケーロという男。
今季のアラベスを構成する選手は、大きく2つのタイプに分けることができる。経験を積むためにレンタルでやってきたビッグクラブ所属の若手エリート組。もう1つは前所属クラブを戦力外となり、アラベスに行き着いた雑草組だ。
左サイドバックのテオ・エルナンデス(アトレティコ・マドリー)、ボランチのマルコス・ジョレンテ(レアル・マドリー)、トップ下のビクトル・カマラサ(レバンテ)など、試合ごとに逞しさを増す彼らの急成長ぶりは目を見張るものがある。
だが個人的に嬉しいのは雑草組、特にアスレティック・ビルバオを戦力外とされた2人、ガイスカ・トケーロとイバイ・ゴメスの活躍である。
FWなのに背番号2を付け、献身的すぎて右サイドバックまでこなしていたアスレティック時代のトケーロは、日本で言えば中山雅史のごとく、ピッチに現れるだけでスタンドを沸かせられる稀有な影響力を持つ選手だった。
トケーロの現在の背番号は18、アラベスでは主に中盤の右サイドでプレーしている。ビルバオ時代ほどの存在感こそなくなったものの、常に全力投球でプレーする姿勢は変わらず、やはり地元ファンからは絶大な支持を得ている。