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カズはいつだってJを大事にしてきた。
50歳の情熱が、日本を前進させる。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/02/27 11:45
真剣な表情と、笑顔が交互に覗く。満員の観客の視線を一身に浴びて、ピッチ上のカズはサッカーが本当に楽しそうだった。
カズが語った「上へいけるチームの条件」。
「今日は50歳の誕生日だったわけですけど、僕にとっては試合の日がたまたま誕生日だった。ずっと試合でのプレーをイメージしてきたので、誕生日だから勝ちたいではなく、とにかく試合に勝ちたいとしか思っていなかった」
昨年のJ2リーグ最終節で、横浜FCは松本山雅とアウェイで対戦している。J1の自動昇格を争う相手から、横浜FCは先制点を奪った。前半終了間際に同点に追いつかれ、後半開始直後に試合を引っ繰り返されるが、直後に2-2へ持ち込む。粘りは見せた。慌てさせた。だが、82分の失点で屈した。
控え選手のひとりとしてゲームを見守ったカズは、試合後に厳しい表情を浮かべた。
「こういう試合を勝ち切れないと、上にはいけないと思うんですよ。善戦というのは、順位が下のチームでもできること。善戦で終わらせずに勝ち切るチームが上に行く。そういうチームになっていかないと、目標は達成できないですよね」
2度目のJ1昇格を目標とするチームにとって、昨シーズンの最後に違いを見せつけられた松本山雅との開幕戦は、今シーズンを占うものだった。だからこそ、カズは自らの誕生日を思考から締め出し、チームの勝利に集中したのだ。最前線からディフェンスに奔走することに、迷いはなかったのである。
「50歳ですけど、個の力でもゴールを」
もちろん、ストライカーとしての野性を封印するつもりはない。自らがもっとも輝く場所を、見失うことはないのだ。
「ディフェンスの連係はできていたんですが、攻撃の連係をもっと高めないといけないですね。やはりゴールを取って、FWとしてしっかり結果を出していくことが重要で。現代サッカーではFWも攻守にハードワークしないといけないですけど、結果を求めていきたい。体力的な部分については、正直言って大変になってきている。そのなかでも、技術だったり駆け引きだったり、経験で補える部分はある。攻撃の連係を高めつつも、50歳ですけど個の力でもゴールを奪えるようにも、なっていかないと」