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カズはいつだってJを大事にしてきた。
50歳の情熱が、日本を前進させる。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2017/02/27 11:45

カズはいつだってJを大事にしてきた。50歳の情熱が、日本を前進させる。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

真剣な表情と、笑顔が交互に覗く。満員の観客の視線を一身に浴びて、ピッチ上のカズはサッカーが本当に楽しそうだった。

スタジアムが1万3000人を超える観客で満員に。

 自らのゴールとチームの勝利の先に、カズはスタジアムの熱狂を思い浮かべる。

 試合前からカズのスタメンが予想されたこの日、ニッパツ三ツ沢球技場は1万3000人を超える観衆で埋め尽くされた。昨年の1試合平均が5000人に届かないクラブとしては、破格の盛り上がりである。

「でも、このスタジアムがお客さんでいっぱいになることって、なかなかないんですよね」と切り出すカズの口調は、シリアスな響きが濃くなっていた。

「見ている人たちの心を打つサッカーをしていけば、お客さんは集まる。そのためには、質の高いサッカー、気持ちの入ったサッカーをやらないと。こういう雰囲気のなかで試合をすることで、クラブは成長していく。僕ら選手が、頑張るしかないですよね」

 Jリーグ開幕前夜に「日本をW杯に出場させる」との野心を抱いて、カズはブラジルから帰国した。果たして彼は日本代表を牽引し、W杯への扉を開いた。カズ自身はW杯のピッチに立っていないが、積み上げたゴールが世界への架け橋となったのは間違いない。

いつだってカズはJリーグのことを考えていた。

 日本代表としてプレーするのと同時に、カズは国内リーグを充実させたいとの思いを温めてきた。Jリーグ開幕前にも、開幕後にも、京都パープルサンガ(当時)でも、ヴィッセル神戸でも、彼は「やっぱり、リーグ戦を盛り上げないとね。そこがすべての土台だから」と話している。

 両チームのサポーターで埋め尽くされたスタジアムは、チアホーンが鳴り響いた1993年のJリーグ開幕直後なら当たり前で、24年後のいまでは例外的となりつつある。それだけに、目の前に広がったこの日の景色を、カズは心に刻んだに違いない。国内リーグからサッカー界を盛り立てていくとの思いを、自らの使命として再確認したのではないだろうか。

「先のことは考えられなくて、明日からまた練習を一生懸命やって、そのために今日からいい準備をする。その積み重ねしかないんですね。それだけで毎日を過ごしている。一秒でも長くピッチに立っていたい。それだけなんです」

 カズがピッチで刻む時間は、そのまま日本サッカーの財産だ。50歳のフットボーラーの情熱が、この国のサッカーを前進させていく。

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