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カズはいつだってJを大事にしてきた。
50歳の情熱が、日本を前進させる。
posted2017/02/27 11:45
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
目の前に広がる景色を、彼は心に刻んだに違いない。
横浜FCに所属するカズこと三浦知良が、また新たな金字塔を打ち立てた。自身が持つJリーグ最年長出場記録を、50歳の大台へ乗せたのである。2017年2月26日に行なわれたJ2リーグ開幕戦は、奇しくも彼の誕生日だったのだ。
松本山雅FCとホームで対峙した一戦に、カズはスタメン出場した。先発に名を連ねるのは昨年7月以来で、開幕スタメンとなると2015年以来2年ぶりだ。
選手入場はチームの最後で、集合写真に後列右端で収まる。お馴染みのルーティーンを経てキックオフを迎えると、背番号11はピッチを疾駆する。
ゲームが動き出しても、ボールに触る場面はなかなか訪れない。最初のプレーは5分だった。相手のCKをヘディングでクリアする。オフェンスの局面でのボールタッチは、限られたものとなった。
“キング”の役目と、ただのフットボーラー。
それも想定済である。反町康治監督が率いる松本山雅は、昨年のJ2リーグで3位に食い込んでいる。2度の直接対決は、どちらも黒星を喫した。昨年のJ2で8位の横浜FCは、チャレンジャーの立場なのだ。
「松本はJ2でトップレベルのチームですから、たくさんのチャンスを作れるとは思っていなかった。それよりも、キャンプからやってきたチームが一体となって守備をして、そこから自分たちの形へ持っていく、という。FWでも守備の連動は心がけていて、そのなかで前へ出てゴールに絡みたかったんですけどね、なかなかそういう形は少なかったですね」
カズは65分までプレーし、チームは1-0で勝利をつかんだ。試合後にはピンクのスーツに着替え、バースデーケーキを口に運んだが、これはもう“キング”としての“役目”と言っていいものだ。メディアを通したファンサービスだろう。ピッチに立っていた50歳は、ひたむきなフットボーラーだった。