書店員のスポーツ本探訪BACK NUMBER
“銀河系レアル”に小学生が勝利する!?
楽しさを超えたサッカーの本質とは。
posted2017/02/12 11:00
text by
今井麻夕美Mayumi Imai
photograph by
Wataru Sato
昨年12月に日本で開催されたクラブワールドカップ決勝、鹿島アントラーズ対レアル・マドリーは記憶に新しい。柴崎岳の鮮烈な2ゴールで一度は鹿島がリードしたが、その後同点に。延長戦の末、優勝を手にしたのはレアルだった。
さかのぼること約10年前、銀河系軍団と呼ばれた頃のレアルに、日本の小学生チームがミニゲームで勝利したのをご存知だろうか──小説の中でだけれど。
2006年刊行の『銀河のワールドカップ』。「桃山プレデター」というチームが世界を目指す物語だ。
しかし、ただの青春スポーツ小説とは一味違う。サッカーのあらゆる可能性や本質までを問う。登場人物たちの境遇や個性は様々で、あのレアルをさらりと登場させる。ボーダレスにサッカーを表現したい、そんな著者の気概がびしばし伝わってくる。
元J2選手が監督を務める小学生チームの夢物語。
作中にこんな会話がある。
「世界のどこに行ってもサッカーは同じです」
「そうだボールは丸い。どこへ行ったって丸いんだ」
ボールも地球も丸い。どんな場所でも、どんな人がプレーしようともサッカーはサッカーだ、なんてことを思わせ、生き生きとした試合の描写に心が躍る。
昼間から公園で酒を飲んでいた失業中の元J2リーガー・花島勝。なりゆきで小学生のミニサッカーに参加することに。4対4、花島は三つ子の男子チームにキーパーとして加わる。相手は男女混合チームだ。三つ子はテクニック、コンビネーション共に素晴らしい。相手チームも負けず劣らずで、意外なほど高いレベルに花島は感心する。