「楽しいだけじゃ、熱くなれない」のか？

　ハンディがあったとしても、スター選手にひるまない桃山プレデター。

　青砥はスーパースターも真似できない技を魅せる。エリカは小さい動きでボールを奪う。玲華はいつもボールが来そうな位置にいる。翼はコートをまるごと把握し、指示を叫ぶ。

　自らの得意分野を最大限生かし、仲間の個性を信じてパスを託す。小説のなかの彼らに、思わず声援を送らずにはいられなくなる。

　サッカーの本質とは何だろう。作中、頻繁に出てくる問いだ。最後、レアルの選手はこう言う。「楽しいだけじゃ、あそこまで熱くなれないだろ」と。確かにそうだ。でも自分と他人を同時に信じて戦えたなら、こんなに楽しいことはないだろう。

　夢のようなサッカーがここにある。