プロ野球亭日乗BACK NUMBER
小林誠司には元木大介の匂いがする!?
なぜ阿部は彼に坊主頭を命じたのか。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/01/13 11:30
監督2期目、大型補強という条件で、高橋監督には優勝への期待がより強くかかっている。土下座をしてまで阿部にキャンプでの指導を仰いだという小林。
「巨人が勝つためには小林が一人前にならないと」
ちょっと気を緩めると、そういうスキを見せてしまうところも、小林の甘さという声もある。
そこを見逃さなかったのが、チームリーダーの阿部だった。
「巨人が勝つためには、こいつがきちっとやって一人前に成長してくれなければダメだ」
こう語って年明けからのグアムでの自主トレを小林とマンツーマンで敢行。その参加条件が頭を丸めて、坊主で参加することだったのは単なるウケ狙いだけではない。
「バリカン持ってこい。サラサラヘアを気にしている。あれはキャッチャー像じゃない」
阿部も入団以来ずっと坊主頭で通してきている。かつてダイエーやシアトル・マリナーズで活躍した城島健司もスポーツ刈りだった。
共通するのは「(マスクを何度も脱着して帽子を被り直す)キャッチャーをやるのには一番、いい髪型だから」(城島)ということだ。
阿部の20年間の捕手人生を伝えるために。
実は坊主でもスポーツ刈りでも、サラサラヘアでも、この問いかけの本質は髪型の問題ではない。
この自主トレは阿部の持つ捕手としてのノウハウを1から教え込むことが目的だ。ただ、その前に小林に必要なのは、そういう技術ではなく、まず野球との向き合い方だった。
野球を一番に考え、捕手というポジションを最優先で考えて、自分の全生活を決める覚悟を持つこと。
阿部はまずそのことを教えたかったのである。
そうしてグアムに乗り込んだ自主トレでは捕手としてのキャッチング、フットワークなど技術面から20年間の捕手生活を詰め込んだ阿部ノートを教科書に、連日連夜の野球談義と阿部先生による授業は続いているという。
丸坊主で参加した小林が、そこで何を感じるか、だ。