プロ野球PRESSBACK NUMBER
混乱を極めた2016年の中日――。
大野雄大の魂の言葉は天に届くか?
text by
伊藤哲也Tetsuya Ito
photograph byKyodo News
posted2017/01/02 11:30
本拠地最終戦後のセレモニーで、ファンにあいさつする中日・大野雄大。誠意ある彼の言葉は、ファンの鬱憤を束の間晴らすこととなった。
「来年も応援よろしくとは、軽々しく言えません」
球団には大量の電話と投書が届いた。
そして2016年シーズンのナゴヤドームの最終戦(9月25日)。すでに、チームは19年ぶりに最下位が決定していた。
監督不在でのセレモニーで、あいさつに立った佐々木崇夫球団社長の謝罪スピーチでは、「お詫びじゃ済まないんだよ!」と罵声が飛び交う異様なムードが漂う始末だった。
ただ、そんな喧噪の中で唯一の救いといっていいのが、選手会長としてあいさつに立った大野雄大の言葉だった。
「今ここで、来年も応援よろしくお願いしますと軽々しく言うことはできません。我々が今すべきことはドラゴンズを応援したい、選手と一緒に戦いたいと思っていただけるようなチームづくりをすることだと思う。選手個々がどうしたらチームが強くなるのかを考え、必ず強いドラゴンズを取り戻すために精進しますので、見ていてください」
2015年のヤクルトのように最下位から優勝は……。
この決意表明には、フラストレーションがたまっていたナゴヤドームの雰囲気も一変。温かい拍手で包まれた。
ただ、大野の言葉を現実のものとするのは決してたやすいことではない。
2017年シーズンは、谷繁監督休養後に監督代行を務めた森繁和ヘッドが監督に昇格。谷繁監督との関係が悪化していた落合博満GMに対しても周囲の反発が強く、契約期間満了として1月末で退団することが決まった。
まさしく新体制での船出となるが、2015年のヤクルトのように最下位から一気に優勝まで登り詰める可能性は……というと疑問符がつく。
FA権を取得していた大島洋平、平田良介の両外野手が残留。何とか流出を阻止し、新外国人は'15年にドジャースで11発を放ったキューバ人のゲレーロ、守護神候補としてベネズエラ人の2メートル左腕・アラウホを獲得した。
主砲のビシエドを含めて中南米軍団を形成するが、助っ人に関しては日本野球への対応力など、フタを開けてみなければわからない。
先発陣補強のため、DeNAからFA宣言した山口俊の獲得に乗り出したが、巨人との一騎打ちで敗れるなど、ここまでは目立った補強はない。