プロ野球PRESSBACK NUMBER
混乱を極めた2016年の中日――。
大野雄大の魂の言葉は天に届くか?
posted2017/01/02 11:30
text by
伊藤哲也Tetsuya Ito
photograph by
Kyodo News
球団創設80周年という節目に最下位の屈辱。それを象徴するような負の出来事は、7月23日、ナゴヤドームでのヤクルト戦で起きた。
夏場から打撃が下降線となった主砲のビシエドが好機にブレーキ。1-3で敗れ、本拠地がファンのため息で充満することとなった。その試合終了後だった。
一塁側ダッグアウト上の観客席にいたファンから、ビシエドに対して辛辣なヤジが飛んだ。
この行為に対して、今季から主将に指名された平田良介が即座に反応。ベンチ前まで出てフェンス越しに、ヤジを飛ばした観客と丁々発止の怒鳴り合いが勃発した。
まさに、一触即発の事態。周囲は騒然となり、表面的には騒ぎが終息しても、後味の悪さが残った。
運が悪いことは重なる。
普段はナゴヤドームにめったに足を運ばない白井文吾オーナーが、この日に限ってスポンサー関係者と試合を観戦していた。球団トップは、その約2週間後の8月9日、低迷の責任を取らせる形で谷繁元信監督の途中休養を発表した。
不可解な電撃人事で、チームもファンもバラバラに。
「ファンの不満の声が大きくなっていた」
白井オーナーは、谷繁監督休養の理由をこう説明したが、不可解なこともあった。
谷繁監督の休養と同時に、佐伯貴弘守備コーチも休養。佐伯コーチはさい配面で指揮官のサインの伝達係ではあったが、低迷の原因でもある打撃、投手部門の主要ポストではない。
佐々木球団社長は「一心同体だから」と話したが、トカゲの尻尾切りの印象は拭えなかった。
谷繁監督と佐伯コーチは同学年で横浜(DeNA)時代からの気心が知れた間柄。谷繁監督とすれば、盟友を道連れにしてしまった心中は察するに余りある。
そんな不可解な電撃人事に対し、ファンの風当たりも強かった。