プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「戦力不足」だった高橋巨人1年目。
勝つしかない覚悟と、世代交代と。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/12/28 11:00
47歳(優勝当時)の緒方孝市・広島監督が戴冠した今年のセ・リーグ。41歳の高橋監督には、来季こそ巨人・黄金時代の幕開けを見せてほしい。
近年経費節減ばかりだったフロントが、動いた。
先発の駒不足を補うために山口俊を、“勤続疲労”の目立つ山口鉄の後釜として森福允彦をFA市場から獲得。
レギュラーを固定できなかった中堅には守備力の高い陽岱鋼を同じくFAで獲ってきた。
懸案だった打線の強化のために元楽天のケーシー・マギーを獲得し、シーズン終盤に不安定さを露呈した澤村のバックアップとして前シアトル・マリナーズの164キロ右腕、アルキメデス・カミネロとも契約した。
そればかりか若手のホープだった大田を出して、日本ハムから先発要員として吉川光夫を獲得する2対2のトレードを行うなど、大胆にチームを動かした。
ここ数年は経費節減ばかりが目的になって、フロントが補強のための資金をきちんと投じてこなかった。そのツケが現状だとすると、ようやく腹を据えてフロントが仕事をしたということである。
「若手を使うために戦う訳ではない」
この補強は、ペナント奪回という目標達成のためであるが、同時に懸案である若手育成の引き金となる可能性も秘めている。
それは勝つことで、育成の余裕と時間ができるということだ。
「若い選手が出てくるに越したことはない」
こう語る高橋監督も、もちろん若手の台頭を待ち望んでいる1人である。
「ただ、若手を使うために戦う訳ではない。とにかく勝つことを大前提に、そこから色々と考えたい」
これもまた本音なのである。
'16年のチーム総得点519点はリーグ4位で、1試合平均3.63得点しか取れていない。4点目を取るのに四苦八苦した得点力不足が、V逸の大きな要因でもあった。
そういうチーム状況で、シーズン序盤から我慢して使わなければならなかったのは主力選手の村田や長野、外国人のギャレットやクルーズだった。若手を我慢して使う余裕はなく、勝つためには、まずチームの柱になる主力を辛抱強く使うことしかなかったのである。
ただ、マギーを獲り、陽岱鋼を獲ることで、打線に厚みが出て、得点力が上がれば用兵も変わってくる。
平均得点があと1点上積みできれば、下位打線に岡本やルーキーの吉川尚輝を使う余裕もでるかもしれない。
投手陣の整備をして白星が先行していけば、選手起用にも余裕が出て若手を使えるきっかけが生まれるかもしれない。