話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
昌子源「センターバックはつらい」
鹿島のDFリーダーは目立ちたがり?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2016/12/07 17:00
昨年から背番号も3になり、鹿島のDFリーダーに就任した昌子源。鹿島の伝統を体現するような男である。
「できるなら違うポジションで」とよく言っていた。
守備はゼロに抑えて当たり前。失点して負けようものなら、その責任とファンの怒りの矛先はセンターバックら守備陣に向かう。攻撃陣は多少ミスしてもポジティブにかつ大目に見られるが、センターバックがミスしたら命取りになる。
責任は重く、評価は辛い。
「できるなら違うポジションでやりたい」
昌子は、よくそう言っていた。
もともとはFWだった。米子北高校時代にセンターバックにコンバートされたが、その時、何度も断ったのは有名な話だ。
「センターバックは面白くないし、点決められへん。サッカーって点を決めて喜ぶスポーツじゃないですか。自分は、その点を決める主役になりたいし、目立ちたかった」
CBは、点を取られて、オウンゴールをして成長する。
監督の指示でいやいやセンターバックになったが、その一方でセンターバックになったからこそプロになれたとも思っている。それは自覚しているのだが、失点して試合に敗れ、批判の矢が何本も胸に突き刺さると昌子も人間である。「なんでDFだけやねん」と落胆し、やるせない気持ちになった。
そういう時、大岩剛コーチはこんな話をしてくれたという。
「大岩コーチからは『FWは何本もシュートを撃って、ドリブルで相手を抜いていくことが成長につながるけど、センターバックは(ゴールを)入れられて、オウンゴールをして、そういう経験をして大きくなっていく。相手にやられて何してんねんって言われることで成長できる』って言われました。ほんま、センターバックはメンタルが強くないとやっていけないポジションやなってすごく思いますね」
対人で負けることで自分の弱点を知り、1点の重みを知ることでDFとしてより成長できるということだが、「メンタルが弱い」という昌子にとっては容易なことではない。トニーニョ・セレーゾ前監督の時は、ミーティングでよく怒られ、その度に落ち込んだ。プレー中にミスすると「あぁ……」と落ち込むがギリギリで折れず、耐えてプレーした。